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10月29日 東京・後楽園ホール DANGAN40 ミドル級8回戦
日本スーパーウェルター級2位
(都城レオ) 湯場 忠志
ゆば・ただし
日本ミドル級2位
胡 朋宏
 (横浜光)
えびす・ともひろ
1977年1月19日/宮崎県 生年月日/出身地 1988年7月25日/兵庫県
183cm 身長 180cm
アマ戦績 24戦17勝(10KO・RSC)7敗
1996年4月14日 プロデビュー 2008年7月5日
47戦38勝(28KO)7敗2分 プロ戦績 9戦8勝(8KO)1敗
左ボクサーファイター タイプ 右ボクサーファイター

 日本3階級制覇の湯場がクラスをミドル級に上げ、日本初となる国内4階級制覇への道を歩み始める。今回のマッチメークはミドル級タイトルマッチの前哨戦的な位置づけになるが、相手が胡というのだからなかなかに厳しい。

 4階級制覇で思い出すのは前田宏行だ。強打のライト級王者だった前田はスーパーライト、ウェルターと危なげなく駆け上がり、05年に4階級制覇をかけてクレイジー・キムに挑戦。結果は2回TKO負けで、両者のパワーの差は予想をはるかに上回るほど圧倒的だった。

 湯場と前田は同じタイプではないし、キムと胡では実績が違いすぎる。だから前田の例は参考にはならないと思いつつも、今回ばかりはパワーの差がはっきりと出そうな気がしている。湯場としては当然スピードとテクニックで上回りたいところだが、ここ数戦を見る限り、残念ながら全盛期のキレを感じることはできない。

 2年前に全日本新人王に輝いた胡は、ナチュラルなミドルウエートで、なかなかのハードヒッターだ。ひどく鈍重というわけでもないから、湯場がうまく戦ったとしても、完全に空転させられるという展開は考えにくい。

 と分析しながらも、正直なところ確信はゼロ。よくも悪くも湯場は「何かをやらかしてくれる」という魅力を持っている。ともにパンチがあるから「倒し倒され」なんて派手な展開も大いに可能性あり。サプライズに期待だ。
(渋谷)
11月1日 東京・後楽園ホール 日本スーパーフライ級タイトルマッチ10回戦
チャンピオン WBA5位/WBC4位
(協栄) 佐藤 洋太
さとう・ようた
日本同級3位
大庭 健司
 (FUKUOKA)
おおば・けんじ
1984年4月1日/岩手県盛岡市 生年月日/出身地 1984年6月8日/福岡県北九州市
171p 身長 _166.7p
32戦22勝(2KO・RSC)10敗 アマ戦績
2004年2月16日 プロデビュー 2002年11月18日
25戦22勝(11KO)2敗1分 プロ戦績 23戦21勝(16KO)2分
右ボクサーファイター タイプ 右ボクサーファイター

 前回8月4日から約2か月。短いインターバルで佐藤洋太が5度目の防衛戦に臨む。現在の全階級の日本王者の中で、最も勢いがあり、最も充実した王者の一人と言っていい佐藤が迎えるのは、3位の大庭健司。2006年の全日本新人王で、デビュー以来、23戦無敗(2分)の挑戦者である。だが、その実力を測りかねてしまうのは、2007年4月以降の7年間に行なった全14戦の対戦相手が、実力未知数のタイ人選手だからだ。
 この3日後の11月4日には、元・世界王者でWBC7位の名城信男(六島)がタイでWBCタイトルに挑戦。去る8月31日には、清水智信(金子)がWBA世界スーパーフライ級王座を奪取している。ランキングの上でも両団体の上位につけ、すでに世界挑戦のウェーティングサークルに入っている佐藤としては、内容が問われ、存在を強烈にアピールすべき一戦という位置づけになるだろう。これまでの対戦相手は翁長吾央(大橋)、中広大悟(広島三栄)、河野公平(ワタナベ)、石崎義人(真正)と強豪揃いで、タイプ的にも色とりどり。決して簡単ではないライバル戦を勝ち抜き、経験も対応力も十分な上に、ベースのアマチュア(盛岡南高校)仕込みの正統派のボクシングに最近はダイナミズムも加わってきた。
 勝敗を予想するなら佐藤の勝利は固いところ。中盤以降のKOもあり得るだろう。それほど、両者の差は大きいと思う。ただ、一方で大庭の心情を想像してしまう。実力を測りかねているのは、他の誰より自分自身だろう。
 2006年12月17日。全日本新人王決勝が行なわれた後楽園ホールで立山信生(船橋ドラゴン)に最終6回3分6秒KO勝ちし、敢闘賞にも選ばれたときは、確かな手応えを抱き、未来を思い描いたはずである。勝ち続けながら恐らくはどこか手応えのあいまいな、敢えて言うなら苦しい7年を経て、ようやく掴んだタイトル初挑戦の舞台。5年前と同じ後楽園ホールは、大庭にとって絶好の自己証明の機会である。自分は一体、どれほどのものなのか……大庭の中にあるはずの、自分自身を確かめたいという強い渇望が果たしてリングの上でどう表現されるのか。個人的にはその点にも興味がある。
(船橋)
11月1日 東京・後楽園ホール 東洋太平洋・日本ウェルター級タイトルマッチ12回戦
チャンピオン 
(協栄) 渡部あきのり
わたなべ・あきのり
東洋太平洋6位・日本8位
庄司 恭一郎
 (戸秀樹)
しょうじ ・きょういちろう
1985年7月10日/福島県双葉郡 生年月日/出身地 1978年1月11日/宮城県仙台市
171p 身長 _166.7p
20戦15勝(6KO・RSC)5敗 アマ戦績 14戦10勝(8KO・RSC)4敗
2004年2月16日 プロデビュー 2006年4月8日
27戦23勝(21KO)4敗 プロ戦績 15戦9勝(3KO)2敗4分
左ボクサーファイター タイプ 右ボクサーファイター

豪腕サウスポー王者・渡部あきのりの東洋太平洋ウェルター級王座で2度目、日本同級王座では初めての防衛戦。挑戦者は、これが初めてのタイトル挑戦になる33歳の庄司恭一郎である。
 庄司は今年3月4日、当時、東洋太平洋ウェルター級1位のパドゥア・D・シンワンチャー (フィリピン) に8回判定勝ちして初のランク入り。8月12日にはミドル級の元日本ランカーである中堀剛(本多)に競り勝って、この日を迎えた。派手さはないが、堅実な試合運びで粘り強く戦うオーソドックスのボクサーファイターだ。
 データの上では、2007年の東日本新人王準決勝で岳たかはし(川崎新田)に判定負け、池田好治(宮田)との2連戦ではいずれも負傷判定負け、森眞(赤城)との2連戦には連勝もいずれも負傷判定と、庄司のサウスポーとの相性の悪さがちらつく。正直、力の差と経験の濃さでも両者の間に開きはあり、勝敗予想は大きく渡部に傾く顔合わせだろう。だが、渡部は安定感という面でまだまだ不安を払拭し切れてはいない。庄司が渡部のパンチ力に気持ちの上で煽られることなくマイペースを貫き、逆に渡部の焦りを誘って、終盤に勝負どころをつくることができるかどうか。序盤から思い切った攻めを仕掛けて渡部のリズムを崩す策も考えられるが、打ち合いは庄司にとって得策ではないように思えるのだが、果たして……。
 一方の渡部にとっては初のタイトル挑戦からの3連敗など、挫折を乗り越えて、ようやく手にしたベルト。目指す場所はあくまで世界と志の高い王者には、少しのもたつきすら許されない試合だが、長いラウンドを冷静に、危なげなく戦う姿を示すことができれば、それもまた成長の証になる。
(船橋)
10月24日 東京・後楽園ホール WBA世界ミニマム級タイトルマッチ12回戦
WBAチャンピオン 
(タイ) ポンサワン・ポープラムック
Pornsawan Porpramook
挑戦者・同級4位
八重樫 東
 (大橋)
やえがし あきら
1978年3月10日/タイ 生年月日/出身地 1983年2月25日/岩手県北上市
159p 身長 159p
アマ戦績 70戦56勝(15KO・RSC)14敗
2001年9月20日 プロデビュー 2005年3月26日
26戦23勝(16KO)3敗1分 プロ戦績 16戦14勝(7KO)2敗
右ファイター タイプ 右ボクサーファイター

 国内最強のミニマム級、八重樫が2度目の世界タイトル挑戦を迎える。初挑戦からは実に4年4ヵ月。まさしく待ち焦がれたチャンスである。
 万能型ボクサーとして鳴らす八重樫は、黒沢尻高校〜拓殖大学時代に全国制覇を果たし、2005年に鳴り物入りでプロ入りしたエリート。4戦目でOPBFミニマム級王座を獲得。順調なスタートを切った。ところが2007年6月、世界王座奪取国内最短記録を狙い7戦目で当時のWBC世界ミニマム級チャンピオン・イーグル京和(角海老宝石)に挑戦し、強打で顎を割られて0−3の判定で初黒星を喫することになるのである。翌年は日本タイトル挑戦権獲得トーナメント『最強後楽園』で準決勝敗退。そんな雌伏の時を越えて、2009年6月、敵地・大阪で空位の日本王座を堀川謙一(SFマキ)と争い、判定勝ちでタイトル獲得に成功した。それからは1位の挑戦者を次々と退けてきた。武市晃輔(金沢)戦では初回のダウンを挽回して3−0の判定勝ち。今年4月には当時WBC11位だった強打のホープ・田中教仁(ドリーム)を技巧でシャットアウト。3度目の防衛に成功するとともに名実ともに国内無敵を証明している。元トップアマらしく攻防ともバランスがよく、落ち着いた試合運びは、派手さはないものの玄人をうならせる。辛酸をなめたイーグル戦以来、そうやってコツコツとキャリアを積み上げてきた男に、やっと再挑戦のチャンスが訪れた。
 挑む相手ポーンサワン・ポープラムック(27戦23勝16KO3敗1分)は、『5度目の正直』で世界王座に就いた苦労人だ。長くPABAチャンピオンとして君臨した後、2007年にWBO王座決定戦に挑戦したのを皮切りに、WBC王座に3度挑戦。井岡一翔に王座を譲ったオーレドンには2度跳ね返された(判定負けと引分)。しかし今年7月30日、敵地インドネシアでWBA王者ムハマド・ラクマンに挑戦し、僅差2−0の判定で悲願を達成した。そして今回は初防衛戦。日本初遠征のチャンピオンは、映像ではガードを固めてずんずん前に出るファイターだが、攻撃の仕掛けはやや遅い。八重樫の勝算は、イーグル戦よりもずっと高いとみる。何より八重樫自身の充実度が、前回とは違うのだ。
 WBA世界ミニマム級王者のタイトルは、かつて所属する大橋ジムの大橋秀行会長が保持したもの。初の同階級師弟世界チャンピオン誕生を、期待したい。

<テレビ放映:当日20:00〜テレビ東京で>
(宮田)
10月10日 東京・後楽園ホール 日本スーパーバンタム級タイトルマッチ10回戦
チャンピオン WBA/WBC同級8位
(伴流) 芹江 匡晋
せりえ・まさあき
日本同級8位
橋元 隼人
 (ワールドスポーツ)
はしもと はやと
1983年3月4日/東京都港区 生年月日/出身地 1983年4月8日/東京都
170p 身長 _
2003年8月15日 プロデビュー 2005年8月20日
22戦19勝(8KO)3敗 プロ戦績 14戦12勝(2KO)1敗1分
右ボクサーファイター タイプ 右ボクサーファイター

 日本スーパーバンタム級タイトルマッチは、チャンピオンの芹江匡普(伴流)が橋元隼人(ワールドスポーツ)を迎えて5度目の防衛戦に臨む。芹江が木村章司(花形)からタイトルを奪ったのが09年12月だからもう2年近く前の話になる。元来フィジカルが強く、リズムも独特で「やりにくそうだな」という印象はあったが、これほどの安定王者になるとは正直なところ思わなかった。スーパーバンタム級はWBC王者に西岡利晃(帝拳)が君臨し、WBA王者も李冽理(横浜光)と下田昭史(帝拳)の間でベルトの移動があった。このクラスで危なげなく4度の防衛戦をクリアしている芹江が「そろそろオレも……」と考えるのは当然だろう。
 であれば芹江にはファンにアピールするような試合をしてほしい。ポイントは「仕掛け」と「つなぎ」だ。まずは相手に合わさずに自分から仕掛けること。さらにいいカウンターを1発決めたらそこで終わらず、次の攻撃につなげていくこと。そんなスカッとするようなボクシングを見せてくれたら、世界挑戦のムードも高まるというものだ。
 挑戦者の橋元はタイトル初挑戦。ワールドスポーツジムにとっても待望の日本タイトル初挑戦だ。バランスの取れた好選手だが、パワーや経験に大きな差があり、芹江有利の予想は動かないだろう。ただしチャンピオンにとって「内容の問われる試合」とは難しいもの。案外面白い試合になるかもしれない。
 セミも好カードだ。東洋太平洋スーパーフライ級ランカーの戸部洋平(三迫)が、プロ3戦目で世界挑戦を2度経験している河野公平(ワタナベ)を迎え撃つ。戸部はプロ2戦目で元世界王者のワンディ・シンワンチャー(タイ)を下して勢いに乗るアマチュア出身選手で、3戦目で河野を指名するというのだからよほど自信があるのだろう。ただし、河野は下り坂に入った選手とはいえ、タフボーイの馬力とスタミナ、そして精神力を甘く見るのは禁物だ。どちらが有利かまったく分からない。緊張感のある新旧対決となるだろう
(渋谷)
10月4日 東京・後楽園ホール 東洋太平洋ライト級王座決定戦 12回戦
WBAライト級7位 WBC7位
(八王子中屋) 荒川 仁人
あらかわ・にひと
OPBFライト級1位
ジェイ・ソルミアノ
 (フィリピン)
Jay Solmiano
1981年12月23日/東京都武蔵野市 生年月日/出身地 1987年2月15日/フィリピン・サンアンドレス
172p 身長 _173p
5戦4勝3KO・RSC1敗 アマ戦績
2004年2月10日 プロデビュー 2007年8月18日
22戦20勝(14KO)1敗1分 プロ戦績 12戦11勝(7KO)1分
左ボクサー タイプ 左ボクサーファイター

 
 日本屈指の技巧派として鳴らす荒川仁人(22戦20勝14KO1敗1分)と、“ラピッド(高速)”の異名を持つ無敗のホープ、ジェイ・ソルミアノのサウスポー対決。
 6月に日本ライト級王座3度目の防衛に成功した後、荒川は“国内最強”を証明するために、OPBFの同級王者・三垣龍次(MT)との対戦を熱望していた。が、三垣が7月のV3戦で拳を負傷し、指名期限中に防衛戦が行えないことから王座を返上。そこで荒川は日本王座を返上し、強豪と噂のフィリピン人とのOPBF王座決定戦に、名乗りを挙げたのだった。荒川の最大の武器はなんといっても卓越した防御勘。常に冷静沈着に相手の動きを見切り、時にぞっとするような情け容赦ないカウンターで対戦者をキャンバスに這わせる。このベビーフェイスが、今回の相手ソルミアノにもそんな形で土をつけることができたら、もう押しも押されもせぬ次期世界挑戦者候補といえるだろう。が、その可能性はまさに五分と五分。近ごろ日本のリングを席巻しているフィリピン人ファイターの一人として、この無敗の24歳も自信満々で打って出てくることが予想されるからである。8戦目でPBF王座(※)、9戦目でGAB王座(※)を獲得し、今年のあたまにはOPBF1位に上り詰めた俊英にとって、待ちわびたチャンスなのだ。映像を見ると、あからさまなファイタータイプではないが、ガードを固めて前方に重心を置き、思い切りのいい左を様々な角度から振ってくる。荒川ならばそのビッグパンチを避け切るとは思うが、“ネクスト・パッキャオ”を夢見る男の勢いは脅威である。とにかく間違いなく、必見の好カード。見応えある鬩ぎ合いが期待できる。
※フィリピン国内王座には二種類ある。PBF(Philippine BoxingFederation)とGAB(Games and Amusement Board)が認定する王座。
(宮田)
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