芹江匡晋[伴流、日本スーパーバンタム級チャンピオン]
「試合翌日に、ジムで映像を見ました。結果は知っていて、ネットなどで語られているのを読んでいたら、『それまでは圧倒していたけど、一発を貰ってしまった』という感じだったんですが、実際に見たら印象は違いましたね。
下田君は、1ラウンドは手数を出して前に出るということでペースを握っていましたが、ラモスは気持ちにゆとりがあって、リングを歩く感じでしたね。5ラウンドくらいから、距離を制しているように思いました。
ラモスは巧いですね。クリーンヒットを与えない。下田君は全開で行ってたから、インパクトは強かったんですが……。ラモスは下田君の動きを見切っちゃってた感じでした。4ランドくらいから下田君はスタミナがキツかったのか、大振りが増えてきた。ええ、キツイと早めの勝負を意識して大振りになってしまうんですよ。
自分がラモスと戦うとしたらですか? 敵地だったら、下田君のように全力でいくでしょうね。でも、どっちが先にジャブを当てるかという距離の取り合いになると思います。最終的には、一発で決まるかもしれません。でも、おこがましいけど自分はラモスの一発では倒れない自信があります。
下田君を倒した選手なので、オレが行きたい(挑戦したい)気持ちはあります」
三浦数馬さん
[元日本スーパーバンタム級チャンピオン。2008年10月、下田を8回負傷判定に下して日本王座奪取]
敵地、しかもアメリカで前半にポイントを取るのは大事ですよね。下田選手も、そのとおりにいってポイントもリードしていたと思いますが、それは攻勢点で、深いヒットはなかった。立ち上がりは、相手も余裕がなかったけど、焦りはなかったですよね。「12ラウンドのどこかで……」という気持ちで、自分のボクシングを崩さなかった。これは、日本の選手にはなかなかできないことかもしれません。そこに、豊富なアマキャリアのどっしり感を感じました。序盤で下田選手の動きを把握して、中盤になって出てきましたよね。下田選手は、クリーンヒットを奪えないから、余計に大きく振ってしまった。当たらないときは、逆にフェイントを使って小さいパンチを多く打ちたいところなんですが……。一瞬のチャンスを逃さないラモスはさすがだったと思います。
両選手の能力的に考えて、下田選手は戦い方次第で勝てたと思います。本当に残念です。
この試合、表面的には、ポイントをリードしていた下田選手が少し気を抜いたところで一発貰ってしまったように見えるかもしれませんが、深く見れば、ラモスの老かいさですね。序盤に下田選手を大きく動かして、スタミナを削って、大きく打ち込ませて、その隙を突くという……
下田選手は空振りによる疲れもあっただろうし、飛ばしすぎもあったかと。クリーンヒットを奪えないから余計、大きく打ってしまった。立ち上がりから上体もよく動かしていたけれど、激しく動きすぎているかなぁって感じました。
国内で世界を獲って、国内で防衛戦をしていくというのが普通のパターンですが、こうやって本場のリングで防衛戦をするなんて、近年にはない“新たな歴史”でしたよね。結果は残念ですけど、この流れを終えてほしくはないですね。もちろん、下田選手にも、また頑張ってほしいと思います。
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