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11月30日 東京・後楽園ホール WBC女子世界アトム級タイトルマッチ
WBC世界アトム級チャンピオン
(青木)小関 桃
こせき・もも
WBC世界アトム級14位
伊藤 まみ(新宿イマオカ)
いとう・まみ
1982年7月31日/長野県 生年月日/出身地 1974年10月12日/山形県
162p 身長 158p
22戦20勝(8KO/RSC)2敗 アマ戦績
2008年5月9日(非公認2007年5月26日) プロデビュー 2008年5月9日(非公認2006年6月10日)
9戦8勝(3KO)1分(14戦11勝3K2敗1分 プロ戦績 9戦4勝(2KO)4敗1分(14戦8勝4KO5敗1分)
左ボクサーファイター タイプ 右ファイター

 最軽量級のサウスポーチャンピオン、小関桃の防衛戦もこれで7度目を数える。5月の前戦では、タイ人のクリカノック・アイランドムエタイを一方的に攻め立てて、すっきりと5回TKO勝ち。その前の対秋田屋まさえ(ワイルドビート)戦の負傷引分防衛の鬱憤もまとめて晴らせたであろう快勝だった。そんな安定王者の陣営に、悩みがあるとすれば、なかなか挑戦者が名乗り出ないこと。しかし今回は、10月の37歳の誕生日を迎える前に世界ランク入りを果たして定年例外適用となった伊藤まみが、「躊躇することなく」手を挙げた。JBC公認前の記録を含めれば、小関と同じ14戦のキャリアがある伊藤だが、前戦まで6回戦だったこのチャレンジャーにとって、28歳のチャンピオンがとてつもなく高い壁であることは間違いないだろう。
 無尽蔵のスタミナに裏打ちされた豊富な手数、スピード、ガードの堅さ、どこをとっても穴がない小関は、ここ数戦、「相手を根負けさせるような、圧倒的な勝ち方」をテーマに、自身のボクシングに磨きをかけている。今回はOPBFスーパーフライ級王者の山口直子やキックの経験豊富な角田紀子(ともに白井具志堅)らパワフルな相手を中心に176ラウンドに及ぶスパーリングを重ね、「あの二人とスパーしたら、試合が怖くなくなると思う」と、自信を深めている。伊藤とは1年前にスパーで手合わせした経験もあり、「気持ちが強い伊藤さんだからこそ、おもしろい試合になるはず」と、油断もない。一方の伊藤は、ワンツーで圧していくファイター型。自他ともに認める「気持ちで戦うタイプ」だが、今回はその感情をコントロールして、「齊藤一人会長と立てた作戦をしっかり実行したい」と言う。9月に新設のWBAライトミニマム級チャンピオンとなった安藤麻里(フュチュール)とは2度戦って1勝1敗。その安藤が初のタイトルマッチで潜在能力を開花させたように、伊藤も37歳で上がる晴舞台で、やや被弾の多い好戦派というイメージをがらりと変えるパフォーマンスを見せる可能性もある。協会主催の女子興行『G-Legend4』のメインイベントに相応しい好ファイトを期待しよう。

※原則として男子ルールを踏襲している女子ボクシングだが、現在、引退年齢や昇級規定(4回戦で4勝以上、6回戦で2勝以上)を中心に、日本女子ボクシング界の現況に合ったルールの整備が検討されているところ。37歳、8回戦未経験の伊藤の世界挑戦には間に合わなかったが、規定が改訂される可能性は高い。
(宮田)
11月30日 東京・後楽園ホール WBC女子世界ライトフライ級タイトルマッチ
WBC世界ライトフライ級チャンピオン
(ワタナベ)富樫 直美
とがし・なおみ
WBC世界ライトフライ級10位
ソン・チョーロン(韓国)
Song Cho-rong
1975年7月31日/東京都大田区 生年月日/出身地 1987年2月8日/韓国
160p 身長 158p
20戦16勝4敗 アマ戦績
2008年5月9日(非公認2007年11月17日) プロデビュー 2004年5月8日
9戦8勝(4KO)1分(10戦9勝5KO1分) プロ戦績 12戦11勝(3KO)1敗
右ファイター タイプ 右ボクサーファイター

 小関と同じく7度目の防衛戦に臨む富樫直美。36歳となり、「少し疲れは抜けにくいかな…」と言うが、チャンピオンとして過ごしているこの3年間の間にタイ、メキシコ遠征でもしっかりと白星を挙げ、技術的な厚みはどんどん増して、充実期の真っただ中にあるように思える。手数がよく出る右ファイターだが、コンビネーションは多彩で、ジャブを軸に相手を誘いながら自分のペースに巻き込んでいく巧さもある。今回迎える孫チョーロンは、元WBAミニマム級チャンピオン。2009年4月に大阪で多田悦子(フュチュール)にそのタイトルを奪われたが、思い切りよくパンチを繰り出してくる好戦派だ。そんな元王者と拳を交えるにあたり、富樫は右クロス、さまざまな角度からのボディ打ちに磨きをかけているという。「倒せるパンチ、ですね。それを意識しています」。孫とならかみ合うのは間違いなさそうだから、最後には豪快なKO劇が見られるかもしれない。
 また、この前座で行われる東洋太平洋ライトフライ級タイトルマッチ、チャンピオンの柴田直子(ワールドスポーツ)対4位の挑戦者・小田美佳(宮田)の10回戦も、KO決着の可能性は大きい。両者は昨年7月以来の再戦。柴田が「似たタイプで、絶対におもしろい試合になってしまう」と言うとおり、前戦は忙しい打ち合いだった。が、ワンツー主体でガンガン前に出る小田に対し、テクニックで優る柴田が確実にヒットを重ね、3回に右を決めてダウンを奪い、4回にコーナーからのタオルを呼び込んでいる。以来1年のうちに、柴田は現世界王者の藤岡奈穂子(竹原&畑山)にプロ初黒星を喫した後、OPBF王座に就き、今回が初防衛戦だ。一方の小田は、3連敗の苦境にいる。柴田が差を広げていることは間違いなく、一方的な試合になる可能性は高い。が、タイトル初挑戦に賭ける小田がどこまでチャンピオンを追い上げるか、も見どころだ。
(宮田)
11月23日 神奈川県・とどろきアリーナ 日ライトフライ級タイトルマッチ10回戦
日本ライトフライ級王者 WBAH WBCL
(川崎新田)黒田 雅之
くろだ・まさゆき
日本ライトフライ級10位
山口隼人(TEAM10COUNT)
やまぐち・はやと
1986年7月17日/東京都稲城市 生年月日/出身地 1989年8月1日/北海道恵庭市
167cm 身長 164cm
3戦1勝2敗 アマ戦績 24戦18勝(8KO・RSC)6敗
2005年5月31日 プロデビュー 2008年6月12日
23戦20勝(13KO)3敗 プロ戦績 10戦7勝2敗1分
右ボクサーファイター タイプ 右ボクサーファイター

 
(船橋)
11月18日 東京・後楽園ホール 日本バンタム級王座決定戦10回戦
日本バンタム級1位
(セレス)岩佐 亮佑
いわさ りょうすけ
日本バンタム級4位
ゼロフィット・ジェロッピ瑞山
(千里馬神戸)
ぜろふぃっと じぇろっぴ ずいやま
1989年12月26日/千葉県柏市 生年月日/出身地 1979年12月11日/フィリピン
170cm 身長 165cm
66戦60勝(42KO・RSC)6敗 アマ戦績
2008年8月2日 プロデビュー 2005年3月14日
10戦9勝(7KO)1敗 プロ戦績 29戦24勝(8KO)2敗3分
左ボクサーファイター タイプ 右ボクサーファイター

 今年3月5日、当時の日本バンタム級王者・山中慎介(帝拳)に挑戦し、最終10回TKO負けに散ってから8か月。日本バンタム級1位の岩佐亮佑(セレス)が、再び日本バンタム級タイトルマッチの舞台に立つ。近年、稀に見る白熱した好勝負となった山中戦は、言ってみれば、岩佐にとって1試合分以上の経験をもたらす価値ある敗戦であり、同時に、テクニック、スピード、パワー、スタミナ、タフネスなど、岩佐が総合的に高い能力を備えていることを、あらためて証明することにもなった。山中戦が岩佐に何をもたらし、どう成長を遂げたのか。インドネシア1位を一蹴した8月の再起戦(2回KO勝ち)を経て迎える2度目の大舞台は、山中戦後の岩佐の全容が明らかになる、という意味でも注目である。

 その王座決定戦の対戦相手だが、2位の椎野大輝(三迫)が10月29日に敵地・フィリピンでWBCインターナショナルバンタム級王者への挑戦が決まっていたために(11回TKO勝ちで見事にタイトル奪取)、また、3位で元・王者の安田幹男(六島)はケガのために出場できず、4位のゼロフィット・ジェロッピ瑞山(千里馬神戸)に決まった。だが、ジェロッピ・メルカドが本名のこのフィリピン人ボクサーは、代役の代役というほど、力の劣る相手ではなく、むしろ、現在の岩佐の力を測る上で格好の力と経験を備えたベテランボクサーと言える。
 
 タイトル獲得歴はなく、突出した武器を持っているわけでもないジェロッピだが、確かな技術と、何より試合巧者ぶりに経験の豊富さが表われる。2年前の最強後楽園準決勝(6回戦)では、評価を高め続ける現・日本スーパーフライ級王者の佐藤洋太(協栄)と引分敗者扱いに終わっているが、個人的にはジェロッピのほうが、やや優勢の内容に感じられた。7月の前戦、東洋太平洋バンタム級王座決定戦で、同国人でフィリピン時代は同門だったロリー松下(カシミ/本名:ロリー・ルナス)と神戸で拳を交え、4度ダウンを奪われての8回TKO負けからの再起戦であることは、メンタルの状態も含めて気掛かりな点になる。ただ、ジェロッピにはフィリピン王座に挑戦し、2度ダウンを喫して9回TKO負け直後の2007年2月、敵地・南アフリカでブシ・マリンガのWBCインターバンタム級王座に挑戦して、引き分けた過去があることも付け加えておきたい(マリンガは現在IBF世界バンタム級1位。2009年3月、長谷川穂積(真正)のWBCバンタム級王座に挑戦して、1回TKO負けを喫している)。

 試合はスピードに優る岩佐が展開をリードすることになるだろう。ジェロッピが岩佐のスピードに対応できるかどうか、序盤の攻防が勝敗を左右する。岩佐にとって、そう簡単な試合にはならないと思う反面、仮にジェロッピが後れを取るようなら、岩佐の圧勝に終わる可能性も大いにあるし、中学2年の頃からセレスジムで腕を磨き、習志野高校で高校3冠を達成して鳴り物入りでプロデビューしたセレス小林会長の秘蔵っ子は、存在感を強烈にアピールせんと腕を撫しているはずである。
                                ☆
 この試合の前には日本ミニマム級王座決定戦が行なわれ、9月に田中教仁(ドリーム)を2-1判定で破り、世界ランク復帰を決めたベテランサウスポー・國重隆(ワタナベ)と、2009年の全日本ミニマム級新人王で日本同級1位の三田村拓也(ワールドスポーツ)が王座を争う。アマ経験(中央大学出身、アマ戦績15勝13敗)もある三田村はここまで10戦全勝(1KO)だが、この4月に初めての8回戦を行なったところでキャリア不足は否めない。世界挑戦経験もあり、日本タイトルマッチも2度経験、相手の長所をつぶす戦い方に長けた35歳の初戴冠が濃厚だが、不安材料はある。國重にとって、これが30戦(22勝(2KO)6敗2分)で初めてのミニマム・ウェート(47.6kg以下)になるのだ。いずれにしても、終盤までもつれる展開が予想されるが、三田村が気持ちを折らず、ボディを中心に相手のスタミナを削ぐことに注力して粘り強く戦えれば、新旧交代の光明が見えてくるかもしれない。
(船橋)
11月3日 後楽園ホール 東日本新人王トーナメント決勝
ミニマム級
  安慶名 健(横浜光)  
  7戦6勝(5KO)1敗   1987年8月2日生まれ 24歳  沖縄県国頭郡今帰仁村出身 身長157p  
  多打 魔炸獅(TI山形) 
  8戦6勝(4KO)1敗1分 1989年5月15日生まれ 22歳 山形県東村山郡出身 本名:多田雅 身長163p 
  
  ともに2度目の新人王挑戦。昨年決勝で原隆二に敗れたものの攻防とも安定している安慶名と、ファイター多打の対決。

ライトフライ級
  栗原 俊博(新日本木村)
  6戦3勝(2KO)2敗1分 1984年5月4日生まれ 27歳 宮城県仙台市出身 身長162p 
  横手 太一 (ドリーム)
  5戦4勝(3KO)1敗   1989年3月17日生まれ 22歳 鹿児島県指宿市出身 身長163p  
  
  栗原、横手ともに2度目の新人王挑戦。横手は硬質なパンチをコツコツ当てるタイプ。栗原は準決勝は不戦勝。準々決勝では左フック一発で初回TKO勝ちを収めている。

フライ級
  青山 功(セレス) 
  6戦5勝(1KO)1敗 1989年5月2日生まれ 22歳 千葉県印旛郡出身 身長169p  
  鈴木 辰弥(山龍) 
  5戦4勝(1KO)1敗 1988年2月8日生まれ 23歳 神奈川県川崎市出身 身長164p
  
  長身から繰り出すワンツーが武器の青山と、手数が出るサウスポー鈴木。

スーパーフライ級
  蔦野 哲平(帝拳)  
  3戦3勝(2KO) 1989年8月1日生まれ 22歳 千葉県船橋市出身 身長168p 
  喜久里 正平(帝拳) 
  4戦4勝(1KO) 1992年3月19日生まれ 19歳 沖縄県島尻郡出身 アマ戦績34戦25勝8KO・RSC9敗 
  
  本命二人が決勝進出。帝拳、サウスポー同士の頂上対決に。

バンタム級
  中川 とん虎(渡嘉敷) 
  10戦7勝(3KO)3敗 1984年10月21日生まれ 27歳 新潟県佐渡市出身 本名:中川知己 身長167p  
  尾島 祥吾(川崎新田) 
  8戦7勝(2KO)1敗 1987年8月9日生まれ 24歳 岡山県津山市出身 アマ戦績5戦4勝1敗 身長168p
   
  接近戦を好む中川と、サウスポーの試合巧者・尾島。
 
スーパーバンタム級
  藤田 敏明(マナベ) 
  6戦5勝(2KO)1分 1984年2月1日生まれ 27歳 東京都北区出身 身長170p
  岩ア 悠輝(新開)  
  7戦6勝(2KO)1敗 1988年6月29日生まれ 23歳 新潟県佐渡市出身 アマ戦績31戦16勝15敗 身長170p
  
  センスを評価されながら脆さのある岩アは2度目の新人王挑戦。独特のリズムで相手を惑わす藤田は難敵。

フェザー級
  千波 丈二(勝又)   
  8戦6勝(4KO)2敗 1991年10月15日生まれ 20歳 東京都墨田区出身 身長170p    
  溜田 剛士(ヨネクラ) 
  5戦4勝(3KO)1分 1993年8月29日生まれ 18歳 長野県上田市出身 
  
  大場雄二との強打者同士の激闘を経て決勝進出した千波と、準決勝の伊藤雅雪との無敗対決で強打を狙いすぎ引き分け勝者扱いの溜田。注目の強打対決。

スーパーフェザー級
  尾川 堅一(帝拳) 
  5戦5勝(4KO) 1988年2月1日生まれ 23歳 愛知県豊橋市出身 
  伊原 健太(三迫) 
  6戦6勝(4KO) 1991年10月28日生まれ 20歳 東京都練馬区出身 アマ戦績3戦2勝1敗 身長173p
  
  日本拳法出身の尾川は準決勝の同門対決を危なげなく突破。この新人離れしたつわものに、勇敢なファイター伊原がどう立ち向かうか。

ライト級
  横山 雄一(帝拳)   
  9戦8勝(8KO)1分 1989年12月4日生まれ 21歳 東京都江東区出身 アマ戦績17戦9勝6KO・RSC8敗 身長174p 
  下薗 亮太(ワタナベ) 
  6戦6勝(1KO) 1984年1月3日生まれ 26歳 福岡県北九州市出身 身長171p
  
  2度目の新人王参戦の横山は、右ストレートでKOの山を築いてきた。低い姿勢で出るファイター下薗は横山の打ち下ろしをかいくぐれるか。

スーパーライト級
  中澤 将信(帝拳) 
  9戦7勝(3KO)1敗1分 1982年8月31日生まれ 29歳 福島県会津若松市k出身 身長180p  
  橋元 納 (金子) 
  9戦6勝3敗 1983年9月21日生まれ 28歳 石川県能美市出身 身長173p
  昨年東日本決勝で土屋修平に敗れた中澤が再び決勝へ。一方の橋元は昨年初戦敗退で今年は決勝進出。よく手が出る。

ウェルター級
  藤中 周作(金子)   
  8戦6勝(4KO)1敗1分 1986年10月20日生まれ 宮崎県東諸県郡出身   
  森戸 拓哉(ヨネクラ) 
  5戦4勝(2KO)1敗 1982年12月13日生まれ 28歳 栃木県宇都宮市出身 身長177p
 
  昨年準決勝敗退の藤中は筋肉隆々だが、パンチは多彩で回転もいい。森戸は右強打が持ち味だが、テクニックでは藤中が上か…。

ミドル級
  米澤 重隆 (青木)   
  7戦3勝3敗1分 1976年10月18日生まれ 35歳 千葉県柏市出身 身長179p  
  佐々木 左之介(ワタナベ) 
  7戦6勝(2KO)1敗 1987年9月9日生まれ 24歳 青森県三戸郡出身 本名:佐々木卓也 身長179p

  昨年6月以来の再戦カード(佐々木の2回KO勝ち)。佐々木は準決勝で旭昇に完勝して波に乗る。格闘技経験豊富な35歳のサウスポー米澤、リベンジなるか。 

11月1日 東京・後楽園ホール 日本スーパーフライ級タイトルマッチ10回戦
チャンピオン WBA5位/WBC4位
(協栄) 佐藤 洋太
さとう・ようた
日本同級3位
大庭 健司
 (FUKUOKA)
おおば・けんじ
1984年4月1日/岩手県盛岡市 生年月日/出身地 1984年6月8日/福岡県北九州市
171p 身長 _166.7p
32戦22勝(2KO・RSC)10敗 アマ戦績
2004年2月16日 プロデビュー 2002年11月18日
25戦22勝(11KO)2敗1分 プロ戦績 23戦21勝(16KO)2分
右ボクサーファイター タイプ 右ボクサーファイター

 前回8月4日から約2か月。短いインターバルで佐藤洋太が5度目の防衛戦に臨む。現在の全階級の日本王者の中で、最も勢いがあり、最も充実した王者の一人と言っていい佐藤が迎えるのは、3位の大庭健司。2006年の全日本新人王で、デビュー以来、23戦無敗(2分)の挑戦者である。だが、その実力を測りかねてしまうのは、2007年4月以降の7年間に行なった全14戦の対戦相手が、実力未知数のタイ人選手だからだ。
 この3日後の11月4日には、元・世界王者でWBC7位の名城信男(六島)がタイでWBCタイトルに挑戦。去る8月31日には、清水智信(金子)がWBA世界スーパーフライ級王座を奪取している。ランキングの上でも両団体の上位につけ、すでに世界挑戦のウェーティングサークルに入っている佐藤としては、内容が問われ、存在を強烈にアピールすべき一戦という位置づけになるだろう。これまでの対戦相手は翁長吾央(大橋)、中広大悟(広島三栄)、河野公平(ワタナベ)、石崎義人(真正)と強豪揃いで、タイプ的にも色とりどり。決して簡単ではないライバル戦を勝ち抜き、経験も対応力も十分な上に、ベースのアマチュア(盛岡南高校)仕込みの正統派のボクシングに最近はダイナミズムも加わってきた。
 勝敗を予想するなら佐藤の勝利は固いところ。中盤以降のKOもあり得るだろう。それほど、両者の差は大きいと思う。ただ、一方で大庭の心情を想像してしまう。実力を測りかねているのは、他の誰より自分自身だろう。
 2006年12月17日。全日本新人王決勝が行なわれた後楽園ホールで立山信生(船橋ドラゴン)に最終6回3分6秒KO勝ちし、敢闘賞にも選ばれたときは、確かな手応えを抱き、未来を思い描いたはずである。勝ち続けながら恐らくはどこか手応えのあいまいな、敢えて言うなら苦しい7年を経て、ようやく掴んだタイトル初挑戦の舞台。5年前と同じ後楽園ホールは、大庭にとって絶好の自己証明の機会である。自分は一体、どれほどのものなのか……大庭の中にあるはずの、自分自身を確かめたいという強い渇望が果たしてリングの上でどう表現されるのか。個人的にはその点にも興味がある。
(船橋)
11月1日 東京・後楽園ホール 東洋太平洋・日本ウェルター級タイトルマッチ12回戦
チャンピオン 
(協栄) 渡部あきのり
わたなべ・あきのり
東洋太平洋6位・日本8位
庄司 恭一郎
 (戸秀樹)
しょうじ ・きょういちろう
1985年7月10日/福島県双葉郡 生年月日/出身地 1978年1月11日/宮城県仙台市
171p 身長 _166.7p
20戦15勝(6KO・RSC)5敗 アマ戦績 14戦10勝(8KO・RSC)4敗
2004年2月16日 プロデビュー 2006年4月8日
27戦23勝(21KO)4敗 プロ戦績 15戦9勝(3KO)2敗4分
左ボクサーファイター タイプ 右ボクサーファイター

豪腕サウスポー王者・渡部あきのりの東洋太平洋ウェルター級王座で2度目、日本同級王座では初めての防衛戦。挑戦者は、これが初めてのタイトル挑戦になる33歳の庄司恭一郎である。
 庄司は今年3月4日、当時、東洋太平洋ウェルター級1位のパドゥア・D・シンワンチャー (フィリピン) に8回判定勝ちして初のランク入り。8月12日にはミドル級の元日本ランカーである中堀剛(本多)に競り勝って、この日を迎えた。派手さはないが、堅実な試合運びで粘り強く戦うオーソドックスのボクサーファイターだ。
 データの上では、2007年の東日本新人王準決勝で岳たかはし(川崎新田)に判定負け、池田好治(宮田)との2連戦ではいずれも負傷判定負け、森眞(赤城)との2連戦には連勝もいずれも負傷判定と、庄司のサウスポーとの相性の悪さがちらつく。正直、力の差と経験の濃さでも両者の間に開きはあり、勝敗予想は大きく渡部に傾く顔合わせだろう。だが、渡部は安定感という面でまだまだ不安を払拭し切れてはいない。庄司が渡部のパンチ力に気持ちの上で煽られることなくマイペースを貫き、逆に渡部の焦りを誘って、終盤に勝負どころをつくることができるかどうか。序盤から思い切った攻めを仕掛けて渡部のリズムを崩す策も考えられるが、打ち合いは庄司にとって得策ではないように思えるのだが、果たして……。
 一方の渡部にとっては初のタイトル挑戦からの3連敗など、挫折を乗り越えて、ようやく手にしたベルト。目指す場所はあくまで世界と志の高い王者には、少しのもたつきすら許されない試合だが、長いラウンドを冷静に、危なげなく戦う姿を示すことができれば、それもまた成長の証になる。
(船橋)
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