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6月4日 東京・後楽園ホール 日本フライ級タイトルマッチ |
チャンピオン WBA4位 WBC4位
(帝拳) 五十嵐 俊幸
いがらし・としゆき |
VS |
日本1位
吉田 拳畤 (ワタナベ)
よしだ・けんじ |
1984年1月17日/秋田県 |
生年月日/出身地 |
1977年2月10日/宮崎県 |
83戦72勝16KO・RSC11敗 |
アマ戦績 |
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2006年8月12日 |
プロデビュー |
1999年1月27日 |
15戦13勝(10KO)1敗1分 |
プロ戦績 |
27戦17勝(5KO)9敗1分 |
左ボクサー |
タイプ |
右ファイター |
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初防衛戦を迎える五十嵐俊幸(帝拳)。アテネ五輪に日本人選手としてただ一人出場したオリンピアンは、最近になってひと皮むけた印象を強く与えている。
かつての五十嵐は上背とスピードに恵まれながら、そのスピードが十分に生かされていないように思えた。動きが直線的で緩急がなく「ただ速いだけ」というイメージを払拭できずにいたのだ。暫定王者だった08年、東農大の先輩である正規王者、清水智信(金子)のテクニックに屈した試合はその象徴と言えるだろう(清水のポジション取り、距離の取り方は抜群にうまかった)。
清水に負けてから日本タイトルに再挑戦するまで6戦で、この未完成のサウスポーは大きく成長したと思う。相手との駆け引きや間合いの取り方を工夫するようになり、フィジカルトレーニングで体もたくましくなった。もうかつての五十嵐ではないのだ。
挑戦者の吉田拳畤(ワタナベ)は清水にタイトルを奪われた元王者。体全体にパワーがあって、ラフファイトを得意にしている。いや、本人にそのつもりはないかもしれないが、どうしても体が突っ込んでしまい、結果ぐちゃぐちゃのラフファイトになってしまうことの多い選手である。
吉田の体力は侮れないが、いまの五十嵐なら横の動きをうまく使って挑戦者の突進をさばき、素早い出入りからクリーンヒットを次々と打ち込めるのではないか。五十嵐にとっては勝敗のみならず内容の問われる試合。快勝とくれば帝拳の本田明彦会長も世界戦へのトライを真剣に考えるだろう。
また、セミには前日本スーパーライト級王者の亀海喜寛(帝拳)が登場する。2月、インフルエンザで防衛戦を棒に振った亀海は王座を返上。世界的に層の暑い中量級で世界を狙うホープだけに、再起戦では圧倒的な試合を見せてほしいところだ。 |
(文/渋谷淳) |
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6月6日 東京・後楽園ホール 東洋太平洋女子スーパーフライ級タイトルマッチ |
チャンピオン WBC3位
(白井・具志堅S) 山口 直子
やまぐち・なおこ |
VS |
同級7位
リアントン・
ロングレアーンギラゴラート(タイ)
Reantong Rongrearnkilalorat |
1978年4月25日/三重県 |
生年月日/出身地 |
1992年6月15日/タイ |
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アマ戦績 |
50戦 国内アマタイトル獲得 |
2006年8月12日 |
プロデビュー |
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10戦8勝(8KO)2敗
(16勝14KO3敗3分=認定前含) |
プロ戦績 |
12戦7勝3敗2分 |
右ボクサーファイター |
タイプ |
右 |
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東洋太平洋女子スーパーフライ級チャンピオン、山口直子の3度目の防衛戦。まだ観たことがない人がいるなら、「観るべきです」と声を大にしておすすめしたいボクサーの一人である。相手の動きをさぐって仕掛ける時の身のこなしや、すばらしい角度の左ボディフックなど、とにかく彼女の動きとパンチ力を見れば、納得してもらえるはず。大学時代までは陸上競技選手で、やり投げの高校チャンピオンという経歴が示すように、アスリートとしての優れた資質も、そのスタイルの基盤にある。
語り継がれるであろう打撃戦を繰り広げ、ダウンを挽回しての9回TKOで藤本りえ(協栄)からベルトを奪ったのは昨年2月。その後2度、タイ人相手に連続TKO(ともに3R)防衛を果たし、今年1月、メキシコが誇る鉄壁の女王、WBC同級チャンピオンのアナ・マリア・トーレスに挑んだ。果敢なアタックを繰り返し、持ち前の強打をボディに打ち込んで、V8を目指す最強王者を苦しめもした。しかし、勝ち方を熟知する手練のメキシカンから明確なポイントを奪うことは難しく、ダウンも喫して大差の判定負け。それでも、初めてアジア圏を飛び出し、敵地の大ブーイングの中、世界の技巧とフルラウンド渡り合った経験は、大きな価値があったはずだ。
このV3戦(女子はOPBF王座を保持したまま世界挑戦ができる)は、その再起戦でもある。相手は当初予定されていたオーストラリア人がキャンセルとなり、5月に入ってタイ人のリアントン・ロングレアーンギラゴラートに変更された。この選手、現在18歳ながらアマチュアで約50戦、国内のアマチュアタイトルを何度も獲得。“まだ見ぬ強豪”の可能性がある。この若いチャレンジャーを相手に、メキシコでの世界初挑戦を経て後楽園に戻ってくる山口直子がどんなボクシングを見せるのか、目を凝らして見たい。 |
(文/宮田有理子) |
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6月13日 東京・後楽園ホール 日本ライト級タイトルマッチ |
チャンピオン WBA6位・WBC9位
(八王子中屋) 荒川 仁人
あらかわ・にひと |
VS |
日本9位
生田 真敬 (ワタナベ)
しょうだ ・まさのり |
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1981年12月23日/東京都武蔵野市 |
生年月日/出身地 |
1981年9月25日/新潟県 |
5戦4勝(3KO・RSC)1敗 |
アマ戦績 |
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2004年2月10日 |
プロデビュー |
2004年3月24日 |
21戦19勝(13KO)1敗1分 |
プロ戦績 |
22戦14勝(7KO)7敗1分 |
左ボクサーファイター |
タイプ |
右ボクサーファイター |
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日本ミドル級タイトルマッチ |
チャンピオン
(八王子中屋) 淵上 真
ふちがみ・まこと |
VS |
日本6位
田島 秀哲 (西遠)
たじま・ ひでのり |
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COMING SOON.. |
1983年7月30日/鹿児島県 |
生年月日/出身地 |
1981年7月1日/静岡県 |
12戦5勝7敗 |
アマ戦績 |
11戦5勝6敗 |
2004年6月12日 |
プロデビュー |
2004年4月25日 |
21戦15勝(6KO)6敗 |
プロ戦績 |
0戦13勝(8KO)7敗 |
左ボクサーファイター |
タイプ |
右ボクサーファイター |
八王子中屋ジムの坊主頭のサウスポー王者2人が、それぞれ防衛戦に臨む。
メインに登場するのは荒川仁人。2010年4月に近藤明広(日東)を判定で下して戴冠後、これが3度目の防衛戦。派手さはないが、堅実な攻防技術には定評があり、防衛を重ねるごとに、その評価を揺るぎないものにしつつある。
2005年に全勝で全日本ライト級新人王に。その後、全日本新人王決勝を争った加藤善孝(角海老宝石/現・日本ライト級5位)と8回戦で再戦し、接戦の末、判定で初黒星を喫したものの、2008年9月、OPBF東洋太平洋ライト級王座に挑み、強豪・ランディ・スイコ(フィリピン)にいい内容で引き分けて一気に評価を高めた。現在、世界ランキングはWBC、WBAともに一桁台に上昇。さらに上を目指すためには、内容も問われる一戦となる。
対する生田真敬は、昨年12月にランク入りし、これが初挑戦。4月5日の前哨戦を3ラウンドTKO勝ちで片付け、勢いに乗って荒川に挑む。経験値を考えても王者優位の一戦だが、最近の荒川は序盤にダウンを喫しており(そのダウンを補ってあまりある戦いをその後、見せるのだが)、付け入る隙がないわけではない。生田は戦績を見ても、サウスポーを苦にするということはなさそう。得意の右を技巧派王者にぶつけ、流れをつくることができるか。まずは、立ち上がりの攻防がカギになる。
淵上誠はこれが2度目の防衛戦。昨年10月、敵地・大阪で鈴木哲也(進光→六島)に6ラウンドTKO勝ちし、3度目のタイトル挑戦を実らせた。この安定王者を下した一戦に続き、2月の初防衛戦ではベテラン・氏家福太郎(新日本木村)から左ストレートで見事なクリーンノックダウンを3ラウンドに奪うなど、8ラウンドTKOで完勝。一気に開花した印象だ。
挑戦者の田島秀哲は2009年10月以来、勝利から遠ざかっており、こちらも王者優位は動かしがたい。ただ、もう2年前にはなるが、2009年3月、淵上と同じサウスポーの強豪・松橋拓二(帝拳=引退)の、アキレス腱断裂から2年半ぶり復帰戦の対戦相手に指名され、そのオープニングラウンド、田島が右ストレートでダウンを奪ったことが記憶に残っている(結果は田島が次の2ラウンドに逆転KO負け)。
初挑戦に賭ける挑戦者が、チャンピオンにどれだけ食い下がれるか。淵上がその力を示すのか。国内最重量級のタイトルマッチを大いに盛り上げてもらいたい。
また、この日の前座には興味深い一戦も。アマチュア国体2連覇から今年2月に6回戦でプロデビュー。いきなり韓国チャンピオンと対戦し、速攻の1ラウンド1分10秒TKOに退けた戸部洋平(三迫)が登場する。今回、戸部がプロ2戦目に迎えるのは、前戦以上の強豪だ。日本でもお馴染みの元・世界王者(WBCミニマム級、WBC暫定ライトフライ級)のベテラン、ワンディ・シンワンチャー(タイ)である。戸部のセコンドにつく升田貴久トレーナーが、現役時代に対戦して(2008年8月)勝っており、この経験もフル活用してハードな一戦に挑むことになる。
なお、この興行はCSフジテレビNEXTが19時から生中継。地上波でもフジテレビが当日深夜3時20分から録画放送の予定。
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(文/船橋真二郎) |
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6月25日 メキシコ キンタナルー州コズメル WBC世界ライト級タイトルマッチ |
WBC世界ライト級チャンピオン
ウンベルト・ソト(メキシコ)
Humberto"La Zorrita" Soto |
vs |
挑戦者同級11位
佐々木 基樹 (帝拳)
ささき・もとき |
not ready |
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1980年5月11日
/メキシコ・シナロア州ロスモチス |
生年月日/出身地 |
1975年10月27日/東京都府中市 |
172p |
身長 |
170p |
1997年9月26日 |
プロデビュー |
1997年2月4日 |
65戦55勝(32KO)7敗2分 |
プロ戦績 |
45戦36勝(23KO)8敗1分 |
右ボクサーファイター |
タイプ |
右ボクサーファイター |
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策謀家・佐々木基樹が35歳8ヵ月にして2度目の世界挑戦を迎える。その相手はウンベルト・ソト。“超”はつかないとしても、世界3階級制覇(暫定含む)を果たしたこのメキシコ人は、押しも押されもせぬ一級品のチャンピオンだ。圧倒的不利な闘いであることは、疑いようのないことである。だが、これまで何度も“番狂わせ”を起こし、スポットライトの下に戻ってきた佐々木基樹だからこそ、ただでは終わらない、何かやってみせるかも、そんなひと筋の光をみてしまうのだ。
2003年2月、人気・実力ともに抜群の長身サウスポー、湯場忠志を9回TKOに下して自身初のタイトルとなる日本スーパーライト級王座を手に入れた時。長い無冠の時を超えて2008年2月に強打のサウスポー王者、レブ・サンティリャン(フィリピン)から東洋太平洋ウェルター級タイトルを奪った時。定石を破る組み立てや開始早々の奇襲攻撃で意表を突き、自分のペースに巻き込んで、いずれも不利の予想を覆してみせた。2009年10月、デビュー12年でつかんだ初の世界挑戦では、WBA世界ウェルター級王者ビアチェスラフ・センチェンコ(ウクライナ)の長いアマ経験に基づく鉄壁のテクニックを崩せず、結果は圧倒的大差の判定負け。だが、ただ手をこまねていたわけではない。バッティングで減点を科されても果敢なアタックを繰り返し、王者の顔を血まみれにして、疲労困憊にさせて、プロモーターを大激怒させた。バッティングはもちろん良くないが、挑戦者の執念は十分に見せつけたと言っていいだろう。その敗戦後、2010年7月の再起第2戦でOPBF3階級制覇のランディ・スイコ(フィリピン)と対戦。敗色が濃くなった10回、左フックでダウンを奪い、劇的な僅差2-1でタイトルをもぎ取った。直近のV3戦ではダウンを挽回。指名挑戦者の金判洙に5回、一気に畳みかけて試合を終わらせている。
そんなサバイバルに成功したベテランに、2度目の世界挑戦はセットされたのだ。またも敵地への遠征。しかも、新人時代以来のライト級に下げての挑戦。さらに、相手がウンベルト・ソト…。2005年にWBC暫定フェザー王座(V1)、2008年10月に同スーパーフェザー級(V4)、2010年に同ライト級(現在V3)とコレクションを増やしてきたこのメキシカンが、以前のように好戦派であれば、佐々木によりチャンスが広がったと思う。が、約2年もKO勝ちがないことからもうかがえるように、ここ数年のソトは手堅い。ファイターの頃からジャブは素晴らしかったが、いつの間にアウトボクサーに転じたのかと思うほど、そのジャブを軸にした多彩なパンチで相手をさばくスタイルに変わってしまった。マイペースで戦い、ポイントで勝つ味をしめてしまったようだ。
スキをみせなくなった百戦錬磨のチャンピオンに対して、佐々木は独自の知略で対抗し、持ち前の猛ラッシュを披露するチャンスをつかめるか…。メキシコからどんなニュースが届くのだろう。 |
(文/宮田有理子) |
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