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11月29日 東京・後楽園ホール DANGAN42 |
Man of the day ○ 荒井 翔(ワタナベ)日本スーパーフェザー級11位
● 名雪 貴久(船橋ドラゴン)
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昨年のスーパーフェザー級全日本新人王が、圧勝で2011年を締め括った。
ガードを高く構える名雪に対し、荒井は落ち着いて左ジャブ、ボディで揺さぶりをかける。相手の動きをよく見て試合を進めた荒井は薙ぐような右フックで仕掛けて次第にプレッシャーをかけると、ロープ際に名雪を追い、今度は左を見せパンチに続けざまの右フック。これをクロス気味に喰った名雪はあえなく崩れ落ちた。ここは名雪が踏ん張りの効かない足で何とか立ち上がって、試合再開。この機を逃さず、荒井は連打。最後は荒井の右フック、さらに右フックで名雪が大きく体を傾がせてキャンバスに沈んだところで、レフェリーが躊躇なく試合をストップした。
荒井はこれで無傷の9連勝(6KO)。新人王獲得直後の6回戦こそ接戦だったが、前戦9月に続き、実質8回戦(名雪はすでに8勝を挙げているA級ボクサー)を2連続TKO勝ち。独特のタイミングに加えて、力強さを増してきた印象がある。来年は日本ランカーなど、拮抗した対戦相手と長いラウンドを戦う中で力を示すことができるか、勝負の年になるだろう。 |
(船橋) |
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11月25日 東京・後楽園ホール 三迫ジム一門会 ライトフライ級8回戦 |
Man of the day ○ 大内 淳雅(角海老宝石)日本ライトフライ級4位
判定3-0(79-74×3)
● 濱中 優一(国際)日本ミニマム級6位
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両者は2009年3月に対戦。そのときは、大内がフルマークの判定で濱中を寄せつけなかった。それから2年半以上が経過しての再戦では大内が1ポイントをロス。それでも、完勝には違いなかった。
「(濱中は)最初の1、2ラウンドまでは前と変わらないかな? と思ったけど、それから前に出てきて、勝ちたいという闘志を感じた」と大内。立ち上がりから軽快な動きで鋭い左をビシビシ決め、上下のコンビネーションにつなげて展開をリード。確かに濱中も、重心を低く落とした独特のフォームから左右のストレートを最短距離で伸ばす攻めで3ラウンド辺りから前に出て、たびたび大内のリズムを遮ったが、かき乱すまでには至らなかった。
大内は濱中の攻めを最小限に受けてかわし、右アッパーをタイミングよく織り交ぜるなど、「当たるパンチを出していった」と状況に応じて柔軟に反応。終盤には右カウンターを何度となくクリーンヒットした。5ラウンドには濱中の右目が真っ赤になるほど、最後まで左ジャブも鋭さを失わなかった。内容的に「倒したかった」というのは大内の本音だろうが、一方で「ムダに打ち合わないこと」が昨年10月の試合で得た教訓だそうだ。
現・日本ライトフライ級1位で今年の最強後楽園で同級を制した田口良一(ワタナベ)との一戦は、一進一退のシーソーゲームの末に大内が7ラウンド2分59秒TKO負け。負けはしたものの、「楽しかった。負けたけど、すっきりした」と振り返る充実した内容で、だからこそ、自らの課題を素直に受け止められた。今年5月の再起戦で、瀬川正義(横浜光)とかみ合わない展開で引き分けたのも、ひとつには、その課題を「意識し過ぎた」という面が少なからずあったのだろう。
今の大内のテーマを換言するなら、試合の流れや展開に応じて、押し引きの判断の精度をより高めていくこと。この日の勝利は、その押し引きのバランスを意識した延長線上にあったと言えるが、もちろん満足しているわけではない。試合の直前、約1週間前にWBC世界ミニマム級王者の井岡一翔(井岡)とスパーリングをする機会があったと、わずか4ラウンドながら、自身が追求するボクシングを「完璧」に体現する王者に感銘を受けた、といった表情で教えてくれた。
2011年を1年半ぶりの勝利で締め括り、来年は「タイトルに挑戦したい」と意気込む大内。一足先に、「勝手にライバル視している」という田口がチャンピオンカーニバルで日本王者の黒田雅之(川崎新田)に挑戦することを受けて、「(田口は)今、いちばんやりたい相手。勝ってもらって、挑戦者に指名してもらいたい」とタイトルマッチでの再戦を熱望していた。22戦14勝(3KO)6敗2分。 |
(船橋) |
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11月13日 東京・新宿FACE 『大和魂』 |
Man of the day 片渕 剛太会長(KG大和)
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メインの中野敬太(KG大和)対中島聖規(マナベ)戦が激闘の末ドローに終わった後、600名収容の凝縮した空間に、「かーいちょうっ!」 「かーいちょうっ!」の会長コールが轟きました。予定にはなかったリング上での挨拶を富樫アナにうながされた片渕剛太・KG大和ジム会長が、リングに上がった時のことです。初の興行開催に挑んだ38歳の会長は、マイクを押しつけられると、きりっと顔を上げて言いました。
「口下手なので、ひとことだけ。ありがとうございました!!!」
思いのこもった一言に、拍手喝采。さまざまな人のサポートを力に、コツコツ手作り手探りで準備してきた初興行を、秀逸な挨拶で締めくくった片渕会長が、この日のMan
of the Dayです。
片渕会長はご存知のとおり、かつては花形ジム所属の日本ランカーでした。ちょっと後ろ重心の、独特の構えを覚えている方も多いでしょう。キャリア15戦(1994年2月〜2003年9月)の中には、元日本スーパーフェザー級チャンピオン・コウジ有沢(タイトルを失った後)との2連戦もありました。そんな片渕会長が神奈川県大和市にジムをオープンしたのは、2007年10月。現在は多数のプロ・アマ選手を擁し、会長はジム運営、マッチメイク、そして選手育成と大車輪の忙しさ。そんな中でさらに今回、新たな挑戦に打って出たのでした。
きっかけは、今年4月26日に開催された『1回花形一門会』。このイベント準備に携わってノウハウを学んだ後、師匠・花形進会長から「次は自分でやってみたらどうだ」と、言われたのだそうです。
「春から計画はしてきたんですけれど、間に合うかなって感じでした。マッチメイクが大変で…。今日は今日で全員にバンデージ巻かないといけなかったんで、自分にまったくゆとりがなかったのが、選手には申し訳なかったですね」
これまではもう一人、バンデージを巻くスタッフがいました。チーフトレーナー、水橋順司さんです。が、水橋さんは病に倒れ、楽しみにしていた初の自主興行を目前にして亡くなったのだそうです。おない年の同志を失った悲しみの中で、片渕会長は走り切ったのでした。
「ジム開設から4年たちました。うちの選手たちはいつもよその興行に出していただいてるんですけれど、やっぱりたまには赤コーナーで戦わせてやりたいな、と思って。今日は、いちおう負けがなかった(5勝3KO1分)ので、よかったです」。会長と選手たちがみせた“大和魂”は、誰よりもまず亡き水橋さんに捧げたいものだったのでしょう。
この日の新宿FACEは、客席は一部の指定を除いて埋まり、立見のお客さんがたくさんいました。小規模会場ならではの一体感も手伝い、会場は熱気に包まれました。情熱あふれる新興勢力が初興行を打つなら、こんな形が正解なのかもしれません。KG大和プレゼンツ、『大和魂』の歴史の第一歩。新たなステップを踏んだチーム片渕のさらなる活躍が楽しみです。 |
(宮田) |
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11月3日 東京・後楽園ホール 東日本新人王トーナメント決勝 |
Man of the day 岩崎 悠輝(新開) スーパーバンタム級
TKO4R2'59"● 藤田 敏明(マナベ)
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半年ほどに及ぶ新人王トーナメントを経て、今年も西と東の代表が出そろいました。11月3日に行われたその東日本決勝戦。激戦を勝ち抜いてきた心も身体もタフな勇者たちが頂上を争うのですから、見応えがあって当然なのですが、今年はほんとうに好ファイトの連続だったように思います。2度目の参戦で念願の優勝を果たしたのが、ミニマム級の安慶名健(横浜光)、ライトフライ級の横手太一(ドリーム)スーパーバンタム級の岩崎悠輝(新開)、フェザー級の千波丈二(勝又)、ライト級の横山雄一(帝拳)、スーパーライト級の中澤信一(帝拳)、藤中周作(金子)ら。新人といえどすでに10戦前後のキャリアがあり、技量とともにモチベーションの高さも感じさせる戦いぶりでした。また今年は、帝拳勢が同一ジム最多の4階級を制覇。現在3人の世界王者を有する名門に、これだけ骨太の若手たちが続くのは、まさにジム内での切磋琢磨の証でしょう。
さて、そんな充実した東日本新人王決勝の中で、もっともいい仕事をしたのは、おそらく満場一致でMVPに選出された尾川堅一(帝拳、スーパーフェザー級)に違いありません。勇敢な伊原健太(三迫)をものすごいボディブローで悶絶させ、容赦なく右ストレートを顔面に打ち込んでの2回KO勝ちでした。技能賞の千波も18歳・溜田剛士(ヨネクラ)と壮絶に打ち合い、ダウンを奪っての判定勝ち。敢闘賞の横山はドファイター下薗亮太選手のアタックに苦しみながら最終5回にストップ。全KO勝利でトーナメントを制しました。ふつうに考えればどうしたってMan
of the Dayはこの3賞の誰か、ということになりますが、意見が割れたので、ここはあえて選外の選手から。昨年から注目されていた岩崎を選びたいと思います。前置きがひじょうに長くなりましたが、ここからは岩崎について。
神奈川の武相高校・駒澤大学でアマ経験を積んだ岩崎は、2009年10月にプロデビュー。昨年東日本新人王バンタム級に参戦し、大本命とみられていました。が、準々決勝で高橋謙太(協栄)に判定負け。テクニックは抜群でも精神的にはあまりタフではないのかと思いました。今年はスーパーバンタム級でシードされ、準決勝では注目株の源大輝(ワタナベ)を見事なワンツーでノックダウン。猛烈な詰めで初回TKO勝ちを収めました。しかし、この決勝はそう簡単にはいくまいと予想していました。相手の藤田敏明(マナベ)が実に巧く、妙なステップとボディワークで惑わせ、そして攻撃力もあるという難敵だったからです。試合はそして、やや藤田ペースで進みました。やはりあの独特の動きはとらえにくい様子でした。「やりづらいことはわかっていたので、1ラウンドからどう行こうかと…」と後のインタビューで答えています。パンチが当たらず、フラストレーションがたまって、集中力が切れてしまうのではないか…昨年の岩崎を思えば、そんな流れも予想できました。が、3回にバッティングで右目ぶたから出血をみても、気持ちは切れず…4回にすべてをひっくり返します。岩崎はスリークォーター気味の見事な左フックで藤田のアゴを打ち抜き、一気に試合を終わらせてしまいました。2分59秒TKO。すばらしい逆転劇でした。
新開ジムにとっては1989年の安達正二(フェザー級)以来22年ぶりの東日本新人王誕生。ちなみに新開徳幸会長も1966年フライ級の東日本新人王、全日本新人王です。12月18日、岩崎は筑豊ジムの小澤有毅を相手に、ジム初の全日本制覇、師弟ルーキーチャンピオンを目指します。 |
(宮田) |
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11月1日 東京・後楽園ホール 東洋太平洋・日本ウェルター級タイトルマッチ |
Man of the day 渡部あきのり(協栄) 東洋太平洋・日本ウェルター級王者
TKO4R 1'32"● 庄司 恭一郎(戸秀樹)東洋太平洋6位・日本8位
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11月1日は協栄ジムの佐藤洋太、渡部あきのりの両チャンピオンが下馬評に違わぬKO競演。Man of the dayはどちらか、意見が割れましたが、最終的には「倒しっぷりの良さ」という意見が決め手になり、渡部を選びました。
挑戦者の庄司恭一郎(戸秀樹)も立ち上がりから強打にさらされながら、足を使って粘り強く対峙し、打ち終わりを狙い続けて右フックや右アッパーを合わせるシーンをつくりましたが、最後はパンチ力がものを言いました。4回、渡部が庄司をロープに追い、左ストレートを誘い水に返しの右フックを一閃。まともにカウンターでアゴを打ち抜かれた庄司は前のめりに崩れ落ち、ノーカウントで試合はストップ。庄司は担架で退場することになりました。
豪快なフィニッシュで試合を締めた渡部ですが、つきまとっている不安定さ、という課題に対する答えは持ち越したと言えるでしょう。「渡部は、ところどころの“点”の部分はいいが、それが“線”にならない」という金平桂一郎会長の評価は的を射ているように感じました。
試合後、渡部は「チャーリー!俺と熱い試合をしようぜ!」と1階級上の東洋太平洋・日本スーパーウェルター級チャンピオン、チャーリー太田(八王子中屋)にテレビを通して、挑戦状を叩きつけました。金平会長も「前々から呼びかけているので、チャーリー選手も意識していると思う。格は向こうが上ですが、こっちもチャンピオン。やれば最高の試合になる」と乗り気の様子。渡部も「面白い試合になると思うし、自分が日本と東洋で満足できればいいけど、欲しいものが違う。自分はまだ守るっていう立場じゃなく、まだまだ成長したいので。3連敗してから負けを力に変えて、成長してきたし、(チャーリーとやれば)勝っても負けてもまだ成長できる。自分は何度も何度も立ち上がるボクサーに、人間としてもなりたいので」と控え室でも熱く語っていました。
(見てください!この目力を!『拳闘家の肖像 渡部あきのり』写心家・山口裕朗氏 HPへ)
「心技体の『心』をいちばん大切にしている」という渡部。その『心』の部分を強化するために、メンタルの先生に学び、関連する本を読み漁っているということは、タイトルを奪った4月の時点で話していましたが、「ようやく(心技体の)三角形のバランスが取れてきたように思います」と手応えを感じている様子。一方のチャーリーも、私の中では『心』の部分の成長が印象的なチャンピオンです。チャーリーは12月12日に防衛戦を控え、年明けからはチャンピオンカーニバルも始まるので、両王者には指名試合が待っています。両雄の激突が実現するとしても先になりそうですが、実現すれば、勝敗に対して、テクニックやパワーより『心』の競い合いが、かなりのウェートを占める試合になるような気がします。 |
(船橋) |
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