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Man of the Day                        今日のベストパフォーマー
  Boxing-Zineが選ぶ、「今日のリングで最もよい仕事をした人」
7月29日 東京・後楽園ホール 東日本新人王トーナメント 

Man of the day 千波 丈二
(勝又)フェザー級
             
             判定2-1 ●フランキー三浦(ドリーム)

 強打の千波が3ラウンドにダウンを奪い、試合巧者ランキー三浦との白熱した打ち合いを制した。4勝はすべてKOというこのハードパンチャーは、昨年の東日本新人王トーナメントでは、覇者となるコーチ義人(角海老宝石)に敗退している。今年の再挑戦はシードのため、7か月ぶりのリングで勘が鈍っていたと語っていたが、前重心で強いストレートパンチを連打できるあたりがすばらしい。8月2日に行われる大場雄二(マナベ)対斉藤慎一(帝拳)の勝者と、9月27日、決勝進出を賭けて戦うことになる。もしもこれをクリアできれば……別ブロックの大本命、溜田剛士(ヨネクラ)と決勝で強打者同士の対決が実現するかもしれない。これは好カードである。
(西脇)
7月22日 東京・後楽園ホール 『』 

Man of the day 大竹 秀典
(金子)日本スーパーバンタム級2位
             
             TKO1回1分30秒 ●丸山有二(野口)日本バンタム級7位

 
 試合開始から積極的に仕掛けた丸山有二。だが「今日は、相手がガツガツ来ると思ってました」という大竹秀典は落ち着いていた。丸山が、ウェイト調整に失敗(400gオーバー)していたため、短期決着を狙って来る可能性も十分と予想していたのだ。こうなると、丸山の“奇襲”は功を奏さない。冷静にカバーリングして上下にショートを当てながら機を窺っていた大竹は、きれいなワンツーで早々に、鮮やかにダウンを奪ってみせた。何とか立ち上がりはしたものの、すでにダメージの色濃い丸山を大竹は焦ることなく攻め、丸山の入り際に今度は左ショートフックを合わせて再びノックダウン。同時にレフェリーが試合をストップした。
 今月6日で30歳になった大竹は、これでひとつの引き分けを挟んで10連勝(8KO)。ランキングも2位に上昇しており、日本タイトルを射程に捉えている。だが、「前までは、早く挑戦したいと思っていたけど、チャンスは来る時に来ると思うし、その時のためにしっかり力を蓄えておきたいという気持ち」と焦りはない様子。「今は、左の使い方を特に意識して練習してます。接近戦が得意なんですけど、左を巧く使いながら、至近距離からでもショートを強く打てるように。アウトボクシングをするための左ではなくて、攻めるための左ですね」という課題も、この日、観戦に訪れていた日本スーパーバンタム級王者・芹江匡晋(伴流)をイメージしてのことではなく、純粋に自分のボクシングを高めるための取り組みだという。
 リーチがあり、やや変則的なタイミングを持つファイター。ここ最近は、要所で左のリードも巧く使っているように見受けたが、左の幅をより広げたいということなのだろう。新人王トーナメントでは2年続けて東日本新人王決勝で敗退。決して器用なタイプではない。「自分にとっては、目の前の一戦一戦が大切」との言葉どおり、一歩一歩ステップアップしてきた。そして、前戦では同郷(福島県郡山市)の先輩ボクサーで元東洋太平洋王者のベテラン・福島学(花形=引退)に引導を渡している。「タイトル挑戦の準備はもうできている?」の問いには「どうですかね〜?」と苦笑いするのみだったが、その表情に、自身の成長に対する確かな手応えは透けて見えた。20戦16勝(9KO)1敗3分。
(船橋)
7月19日 東京・後楽園ホール 『ダイナミックヤングファイトボクシング』 

Man of the day 高橋竜也
(ヤマグチ土浦)
             
             TKO5回1分20秒 ●齋藤純彦(輪島功一スポーツ)

 
 高橋竜也が序盤の劣勢を挽回して逆転TKO勝ち。試合後、「前の試合でも2回にダウンしたし、立ち上がりはずっと課題」と浮かない表情で話したとおり、開始から齋藤純彦に間合いを巧く外され、打ち終わりをコツコツ狙い打たれた。ペースをつかめないまま迎えたラウンド終了間際には、左フックでダウン。最悪のスタートになった。2回に入っても、ペースを変えられない。齋藤のクロス気味の右でぐらつくなど、どうにも突破口を見出すことができなかった。
 ターニングポイントは2回終盤だった。高橋が左目の横をカット。レフェリーがブレーク時に傷を確かめ、ヒッティングの動作を示した直後、その一瞬の間を突いて高橋の右が齋藤を捉えると、流れは打ち合いへと一気に傾いていく。「バンタム、スーパーバンタムでは身長・リーチがあるほうなので、自分の距離をイメージしていたんですが……」という高橋だが、その優位性を活かすボクシングはできていなかった。高橋自身「左ジャブが当たらなくて、距離感がつかめなかった」と振り返る悪い流れの中、「もう開き直って行った」と、迷いを断ち切ったかのようなショートレンジの連打で展開を切り開いていく。打ち返されても、さらにそれを上回る手数で打ち返し、泥臭くも見事にペースを手繰り寄せて迎えた5回、ワンツーでついに逆転のダウンを奪った高橋は、立ち上がった齋藤を連打で追い、最後はレフェリーストップを呼び込んだ。
 高橋はこれで7連勝。同時に5連続KO勝ちを飾ったが、「KOは狙っていません。いつも、8ラウンドフルにやるつもりでやっています」とは、ロングレンジで打たせず打つ、思い描くボクシングができなかった反省も込めたコメントだろう。「自分のスタイルを確立して、日本ランク入りを狙いたい」と堅実に足元を見つめる22歳。確信を持って、距離の長短を使い分けられるようになれば、すらっとした見た目以上のパンチ力と気持ちの強さも備えており、十分に存在感を示せるのではないだろうか。14戦12勝(8KO)2敗。
(船橋)
7月11日 東京・後楽園ホール 

Man of the day 原 隆二
(大橋)  日本ミニマム級7位

              TKO6回1分28秒 ●石井 博(レイスポーツ)

  
 
(船橋)
7月6日 東京・後楽園ホール 最強後楽園 日本王座挑戦権獲得トーナメント

Man of the day 岩渕 真也
(草加有沢)   日本スーパーライト級7位

              TKO4回47秒 ●小池 浩太(ワタナベ) 日本スーパーライト級6位
 

 最強後楽園の二日目。スーパーフェザー級の金子大樹(横浜光)対吉田恭輔(帝拳)の打撃戦もよかったが、インパクトの点で、ワンパンチKOで決勝を決めた岩渕のパフォーマンスを選びたいと思う。
 ともに2004年デビュー、これがプロ19戦目という二人の対戦は、ファイタータイプの小池がいつもどおり前に出る形でスタートした。接近戦に持ち込もうと距離を詰めてくる相手に対し、岩渕はステップを踏みながら自分の距離をキープ。相手のプレスが強すぎて、なかなかダメージングブローを打ち込めないでいた。印象的には小池ペースの初回を経て、2回に入ると岩渕も強いパンチを放ち始め、徐々に流れは岩渕へ。そして4回、小池が懐へ飛び込んできたところに合わせた岩渕の右フックが頭にヒット。かすったような感じに見えたが、それが効いて足がバタつき、ダメージを見たレフェリーが試合終了をコールした。このところ上昇気流に乗っていた小池をストップするとともに19戦16勝(13KO)3敗とレコードを伸ばした岩渕は、この日の最終試合で同級4位の方波見吉隆(伴流)を3-0の判定で下した麻生興一(角海老宝石)と決勝を戦う。
(西脇)
7月5日 東京・後楽園ホール 最強後楽園 日本王座挑戦権獲得トーナメント

Man of the day 田口 良一
(ワタナベ)  日本ライトフライ級2位

              判定6回 ●久田 哲也(ハラダ) 日本ライトフライ級3位
 

田口良一。線が細く、迫力に欠け、正直なところ印象は薄かった。この日もスタートはガンガン前に出る久田に押され気味で、仕方なく付き合ってみた打撃戦も何だか部が悪い。本人曰く「いいパンチを当ててもお構いなしに出て来るのでやりずらかった」そうだが、ここからズルズルといかず、流れを止めて見せた姿に目を見張った。スパッとスタイルを変える思い切りの良さと、それを実行できる冷静さ。トップクラスのボクサーでも、案外できないものである。
 ターニングポイントは3回。セコンドのアドバイスに耳を傾けた田口はステップワークを意識した。ただ下がるのではなく、小さなサイドステップやバックステップで久田をいなし、ジャブや思い切りのいいボディブローを打ちこんだ。終盤に入ると右アッパーも有効にヒット。スタイルを変えてからは危なげないボクシングで勝利を手にした。
 このボクサーは勘がいいと思う。あいている場所を探すのが早いし、目がいいからパンチをもらう場面も少ない。もともと好戦的な性格のようで、度胸にも問題なさそうだ。フィジカルの強さとコンビネーションを使った厚みのある攻撃を身につけると、かなり面白い存在になれそうな気がした。
 日本タイトル挑戦権をかけた決勝では、準決勝で瀬川正義(横浜光)を退けた元アマ王者、木村悠(帝拳)との対戦が決定した。
「うまい選手だしアマチュアでチャンピオンになっているので経験もあると思う。もっと練習して、スタミナをつけて、できればKOで勝ちたい」
 試合の行方を占うのは難しいが、興味深い技巧派対決となるだろう。
(渋谷)
7月4日 東京・後楽園ホール 東日本新人王予選

Man of the day 本間 愛登
(帝拳)  ライト級

              TKO4回 ●大久保 大騎(E&Jカシアス)


 ルーキーのてっぺんを目指し、4回戦ボーイたちが鎬を削る新人王トーナメントは、心と体が本当にタフな男だけが勝ち上がることのできる戦いだ。何しろ相手を選べない。勝てば次が決まっているから、ケガもできない。そして、まだデータ豊富とはいえない新人選手たちのこと、山ガタのどこに好カードが隠れているかわからないから、観る側もまったく油断できないのである。
 この日も右一発による初回KO勝ちや35歳の負け越しの選手がTKO勝ちを収めたりと興味深い戦いがいくつかあった。が、ここは今日最高の激闘を制した本間愛登を讃えたい。
 本間と大久保はともに昨年の新人王戦に参戦していて、大久保は全KO勝ちで同トーナメントを制覇した土屋修平に、準々決勝で敗れている。これまで負けはその土屋戦のみで5戦4勝(4KO)1敗、今年はシードで、この試合がその土屋戦以来11ヵ月ぶりのリングである。本間の方は昨年は一階級下で、こちらも優勝を果たす荒井翔に初戦でKO負け。しかし今年は、初戦で初回KO勝ちを収めており、幸先のいいスタートを切っていた。
 そんな二人の対戦。パンチ力が強く、武器である“一発”を狙ってくる大久保に対して、本間は基本に忠実に、コンビネーションで攻撃を組み立てる。中盤の大久保のボディ攻撃にも耐え抜き、懸命に手数をキープ。中間距離での打撃戦は、やはりジャブ、コンビネーションを出していく本間の方が見栄えいい。コツコツと細かいパンチをコンスタントにヒットしたことで、大久保の左目付近を腫れも顕著になった。そして迎えた最終回、本間がワンツーを連打したところでレフェリーが割って入り、激しい打撃戦に終止符を打った。時間は4回2分24秒。本間はこれで4戦3勝(2KO)1敗に。
 9月28日の準決勝では、8月9日に行われる鈴木勇治(渡嘉敷)対下薗亮太(ワタナベ)戦の勝者と闘うことになる。
(宮田)
7月2日 東京・後楽園ホール 東洋太平洋ライト級タイトルマッチ

Man of the day 川瀬 昭二(松田) 東洋太平洋ライト級3位 日本ライト級1位

              KO10回2分31秒 ◎三垣 龍次(M.T) チャンピオン WBC6位


 壮絶な打ち合いだった。まさしく根競べ。先に気持ちが切れた方が負ける、そんな戦いだった。大ピンチから挽回してKO防衛を果たしたチャンピオンと、大健闘はしたものの最後はテンカウントを聞かされたチャレンジャーは、どちらもMan of the Dayに相応しい。でも、敢えて選ぶならばやはり、格上を大いに苦しめ、2度目のタイトル挑戦にベルトへの執念をみせた挑戦者である。
 三垣がもともとスロースターターであることもたしかだが、川瀬はスタートから好調に見えた。積極的にジャブを出し、右につなげていく。初回のうちに王者の左目上をパンチで切り裂きもした。有効打の数では三垣の右の方が上回ったかもしれないが、3回、4回と鮮やかな右カウンターを決めてチャンピオンをたじろがせてみせた。2回に右目上、4回には左目下、いずれもパンチで傷を負った川瀬は、中盤から視界がかなり厳しかったことを試合後に告白した。たしかに中盤は左ジャブでペースを整えた三垣が波に乗った。が、終盤戦に突入しても、視界が悪く、打たれ疲れているはずの川瀬は手数が落ちないのだ。。8回に攻撃のペースをあげると9回、右カウンターを機に連打。チャンピオンをグロッギーにさせる大チャンスを迎えた。ところが…ここでレフェリーがなんと試合を中断するのだ。三垣のグローブのテーピングが剥がれていたためで、コーナーでこれを直すのに三垣は25秒の猶予を得た。試合の結果がひっくり返っていた可能性は、低くない。三垣にとってはラッキーだった。そして、川瀬は、気持ちの糸がここで切れてしまったのかもしれない。次の10回、チャンピオンに右、左、右のストレート3連打を痛打されてダウン。なんとか立ち上がったがカウントアウトされ、目前にあったタイトルを逃した。試合後、控え室で敗者は「気持ちのぶつかり合いだった。自分の気持ちの方が先に折れたということ。いいパンチを当てたと思うが、相手の気持ちは折れなかった」と語った。潔い言葉に、悔しさがにじんでいた。
(宮田)
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