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Man of the Day                        今日のベストパフォーマー
  Boxing-Zineが選ぶ、「今日のリングで最もよい仕事をした人」
9月30日 東京・後楽園ホール CHALLENGE SPIRIT   スーパーフェザー級6回戦

Man of the day 石川 昇吾
(新日本木村)  
             TKO5R2'22''
             ● バロディア・カレロ・エルナンデス(ワタナベ) 

 カシアス内藤2世にして元高校3冠の内藤律樹が華々しいプロデビューを飾ったのは9月30日の後楽園ホール。その前座でもう一人、後楽園ホールを沸かせたのがセミファイナルに登場した新日本木村ジムの石川昇吾(28歳)だった。
 石川は22戦のアマ経験を経た後、2008年3月に24歳でプロデビュー。翌09年の東日本新人王戦のスーパーフェザー級を制覇した右のボクサーファイターだが、全日本新人王決勝で福岡帝拳ジムの吉田恭輔に判定で敗れ、8回戦に昇格してからは昨年10月の涼野康太(五代)戦も判定負け・・。こうして彼は半ばボクシングファンの視界から消えた存在になっていたのである。
 その男がアマチュアボクシング最強のキューバ出身で、かつて同国のナショナルチャンピオンだったパロディア・カレロ・エルナンデスを5回に逆転TKOに屠ってしまったのだ。
 この快挙は石川の直訴が発端だった。以下は木村ジムの木村日出之マネジャーのコメントである。
「“あのキューバ人がデビュー戦の相手を募集しているので僕が務めたい”と石川から言われるまで、私はこの試合のことを、よく知らなかったんです。調べたらキューバ人は150勝13敗の凄い戦績。勝ったらワタナベジムから賞金が出るという・・」。その事実を知った日出之さんはワタナベジムに連絡すると「相手は決まってない」との返事。こうして話はたちまち纏まったのだった。
 この試合は石川が1回持ちこたえたら、10万円獲得。2回なら20万円。勝ったら50万円を頂けるというシステム。「随分プロを馬鹿にした話だ、という声もあったけど、既に31歳。しかも5年もブランクがあるという。それなら勝負は分からない。で、ようし、やってやろうじゃないか、と・・」
 そして試合。
 初回。キューバ人は小気味いいジャブから、右を顔面に。さらに左右のボディフック・・。が、この攻撃を石川は大方、ブロックし、無事に初回が終了。この時点で10万円をゲットだ。2回も同じ様な展開で倒されることなく終了すると場内から盛大な拍手と「おめでとう」の声がかかった。20万円獲得。
この20万円に安心したわけではないだろうが、4回終了間際に石川がパロディアの左フックを浴びてダウン。「これで終ったな」。リングサイドから落胆のため息がもれた。
5回が始まると石川はパロディアに両手で「来い、来い」のゼスチュア。よく、グロッギーになった選手が、それを気取られまいとした時に行うパフォーマンスである。
 ところが―。
「実はダウン食って帰ってきた石川の表情がそれまでとは全く違っていたんです」。振り返って日出之さんが笑う。つまり、そのダウンが、それまでガチガチになっていた彼から余分な気負いを取り去ってしまったのだ。
 力みがすっかり取れた石川が一気にラッシュ。切れのいいコンビネーションがキューバ人を襲うと主審が割って入り、試合を止めた。これで50万円ゲット・・。
「強い選手と組んでください。というのが石川の口癖。でも本当によくやってくれた」と日出之さんは相好を崩し「50万円はマネージメント料を引かず、全額渡します」
 これが約1年振りの試合だった石川は医務室から控え室に戻ると「試合が出来なくても、練習はしたし、フィジカル面を鍛えたのがよかった」。言葉少なげに語ったが、ジム関係者は、皆が皆お祭りの夜のようにおおはしゃぎだった。
(丸山幸一)
9月28日 東京・後楽園ホール 東日本新人王トーナメント準決勝

Man of the day 岩崎 悠輝
(新開) スーパーバンタム級 
             KO1R1分41秒
             ● 源 大輝(ワタナベ) 

 これまで4戦4勝3KOと無傷の源大輝を、見事な右ショートカウンターでキャンバスに叩き落とした。立ち上がってきたもののダメージの残る相手に畳みかけてレフェリー・ストップ。好カードは101秒で幕切れとなった。
 昨年に続き、スーパーバンタム級で東日本新人王トーナメントに参戦してきた。神奈川・武相高校ボクシング部出身。距離感や的確なパンチにセンスの高さは明らかなのだが、競り合いになると心のタフネスに難をみせる。昨年、期待されながら準々決勝で敗退した岩崎には、そんな印象があった。シードで参戦した今年は、7月4日にセレスジムの宿利雄太に判定勝ち。そしてこの日の準決勝で、アグレッシブなハードパンチャー・源を、緊迫のパンチの交換の中で見事に斬って落とした。戦績はこれで7戦6勝(2KO)1敗。11月3日の決勝で対戦するのは、藤田敏明(マナベ)。変則的なステップと柔軟なボディワークで幻惑するこの巧者を相手にいかに勝利を手繰り寄せるか、見ものである。
(宮田)
9月27日 東京・後楽園ホール 東日本新人王トーナメント準決勝

Man of the day 中澤 将信
(帝拳) スーパーライト級
             
             TKO4R 1'05"
             ● 宮本 亮佑(渡嘉敷)

 帝拳ジムから5選手が出場したこの日の東日本新人王準決勝。同門対決を制した尾川堅一(帝拳)もすばらしい出来だったが、5人の中で最後に登場したスーパーライト級の中澤将信が、Man Of The Day。
 積極的にパンチを繰り出すものの外側からのパンチが多い宮本亮佑(渡嘉敷)の動きを、中澤は冷静に見切っていた。インサイドからの正確なパンチで宮本にダメージを蓄積させ、3回にノックダウン。試合は最終回に突入したが、中澤は連打で宮本を棒立ちにさせ、TKO勝ちをもぎ取った。
 中澤の激しい連打に晒されながら、宮本も自らの頬を叩き気合を入れ奮闘。会場大喝采の好試合だった。
 昨年、東日本新人王ライト級決勝で土屋修平(角海老宝石)に敗れた中澤。階級を上げて、今年こそルーキートーナメント制覇を目指す。
(西脇)
9月22日 東京・後楽園ホール to the Future WBA世界ライトミニマム級初代王座決定戦

Lady of the day 安藤 麻里
(フュチュール)    WBA世界ライトミニマム級ランカー 
             
             判定3−0(97−93・99−92・98−92 )
             ●アマラ・ゴーキャットジム(タイ) WBA世界ライトミニマム級ランカー

 初10回戦で初のタイトルマッチに挑む安藤には、厳しい戦いになるのではないかと思っていた。しかし蓋を開けてみれば、天晴れの圧勝。脱帽である。
 新設のWBAライトミニマム級の初代チャンピオンを決める戦い。安藤の先輩で同ミニマム級王者・多田悦子(フュチュール)に挑戦経験(判定負け)があるアマラは、タフで手強い相手だ。しかし安藤はスタートからジャブと右ストレートで相手の前進をさばき、早々とペースに乗った。とくに右アッパー、左ボディブローのコンビネーションは秀逸。パンチを次々とつないで相手の圧力に対抗し、3回からは右カウンターも次々とヒットし始めた。このハイペースが最後までもつのか、それだけが心配だった。この前哨戦で8回戦を戦っているが、3ラウンドで勝利しており、実質6回以上を戦ったことがないのだ。6回、7回からタイ人がボディを狙ってプレッシャーを強めてきた。が、安藤は右ストレート、左フックで出てくる相手を迎え撃ち、10ラウンドを戦い切った。
「スタミナは自信がありました。今までで一番たくさんスパーリングをしたので。自分には最高のトレーナー陣がついていると思って戦いました」。勝者のコールを受けて号泣した新チャンピオン。高校時代は陸上競技・砲丸投の選手だったというのが信じがたい小柄な体に、WBAの大きなベルトを巻いて、観客の歓声に応えた。2連敗でスタートしたレコードは、これで11戦8勝(4KO)3敗に。
 この試合をスカイAスポーツで解説したWBCの対抗チャンピオン(アトム級)、小関桃(青木)は、「文句のつけようがなかったですね」と新王者を称賛。そして、「伊藤まみさんと6回戦を戦っていた時とは別人のよう。世界タイトル挑戦となると、こんなにも上積みしてくるんだと痛感しました。正直、試合を見ながら、統一戦やりたいと思いました」と、6度防衛中のチャンピオンは、ライバルの出現に高揚した様子だった。
(宮田)
9月2日 東京・後楽園ホール DANGAN 37

Man of the day 中嶋 孝文
(ドリーム)    
             判定3−0(78-74 78-75 78-75)
            ●臼井欽士郎(横浜光) 日本バンタム級2位
 臼井欽士郎は昨年9月、2度目の日本バンタム級タイトル挑戦を期して、最強後楽園に出場。勝てば挑戦権を手にする決勝で、当時20歳のホープ・岩佐亮佑(セレス)に4ラウンドTKOで完敗を喫した。傷心の31歳は再起後、韓国チャンピオン、若手のノーランカー相手に2連勝。痛烈な新旧交代劇から這い上がってきた。
 一方の中嶋孝文。日本スーパーバンタム級4位で迎えた2008年10月の金沢知基(角海老宝石=引退)戦で、最終回にダウンを奪われてドローに終わったところから歯車が狂い始めた。年が明けた1月、金沢とのダイレクトリターンマッチで3ラウンドTKO負け。同年9月、アマ出身(東福岡→拓殖大)の新鋭・蔦谷貴法(博多協栄)に8ラウンドKO負けを喫してランキングから姿を消した。それからノーランカー相手に地道に3連勝を重ねた27歳はこの日、ランク復帰のチャンスをつかんだ。
 ともに挫折を知る実力者同士、結果だけが重要なシビアなサバイバル戦は、終始一貫、一進一退の接戦だった。序盤は豊富なアマ経験(宮崎・日章学園→中央大)をベースに持つ臼井がベテランらしい技巧でややリードするが、体格差に圧されてか、中盤に入るとトリッキーな技巧を併せ持つ中嶋の上下への思い切りのいい攻めが、臼井を一歩、上回った。それでも最終回には臼井が意地を見せ、中嶋の攻めをさらに上回る手数で押さえ込む。後楽園ホールのボルテージは最高潮に達し、試合終了のゴングは鳴った。
公式のジャッジは3〜4ポイント差で中嶋の勝利を支持。少なからず、ドローの声も聞かれたが、内容自体は甲乙つけがたい白熱のドローでも、臼井にとっては、なぐさめにもならない手痛い結果には違いない。およそ2年ぶりのランク復帰を確実にした中嶋。結果を手にしたからこそ、この厳しい戦いを乗り越えた経験は大きな財産となるのかもしれない。24戦18勝(7KO)5敗1分。
(船橋)
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