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Man of the Day                        今日のベストパフォーマー
  Boxing-Zineが選ぶ、「今日のリングで最もよい仕事をした人」
8月31日 東京・日本武道館 WBA世界スーパーフライ級タイトルマッチ

Man of the day 清水 智信
(金子)挑戦者
             
             判定2-1 ●ウーゴ・カサレス(メキシコ)WBA世界スーパーフライ級チャンピオン
 
 
(渋谷)
8月16日 神奈川・とどろきアリーナ ホープフル・ファイト8

Man of the day 佐野 友樹
(松田) 東洋太平洋ライトフライ級3位 日本1位
             
              判定1−2 ○黒田 雅之(川崎新田) 日本ライトフライ級チャンピオン

(船橋)
8月10日 東京・後楽園ホール WBC世界ミニマム級タイトルマッチ

Man of the day 井岡 一翔
(井岡) WBC世界ミニマム級チャンピオン
             
              判定3-0 初防衛   ●ファン・エルナンデス(メキシコ) 同級1位


 実際に両者が対峙してみて明らかになったのは、前情報が少なく、アゴがもろいとも噂されていたチャレンジャーが、1位の肩書きにふさわしい技術と、粘り強さを持ち合わせていたことだった。そして、だからこそ、そのツワモノとの鬩ぎ合いに勝利した若きチャンピオンが、輝くのである。
 終始クロスレンジに立って駆け引きし合った。井岡は一定の距離を保ちながらプレッシャーをかけて、右ストレートで誘いをかけた。4回終了後に39-38 39-37×2というスコアを聞くと、5回からは明らかに際どいタイミングを見出そうと右を狙っていった。メキシコからの刺客は、鋭いアッパーや渾身の右ストレートで脅かしてくる。が、井岡は逃げない。7回にはボディをしこたま叩いてロープ伝いに追う。そんな中で右を被弾することもあるが、ラウンド終了間際には右ストレートを逆にお見舞してみせた。そして続く8回に右のストレートとアッパーを効かせ、エルナンデスを大ピンチに陥れた。が、初遠征に賭けるチャレンジャーは、折れなかった。それどころか10回には猛反撃に出て、王者の右目上をパンチで切り裂いてみせる。井岡にとってはアマ・プロ通じて初の目の上のカットだ。「焦りはなかったです。切れたのは分かったけれど、後半だったし」という井岡は、11ラウンド以降も積極的に攻める姿勢を貫いて試合終了を迎えた。
 この初防衛戦のキャッチフレーズは、『強い王者に、僕はなりたい』だった。今年2月、一階級下げたミニマム級でWBC王者オーレドンに挑み、見事な一撃KO勝利で日本最短7戦目での戴冠を果たした当時21歳の若者には、常に「期待」がついてまわる。日本初の4階級制覇は、まったく現実味がある。が、記録が重要なのではない。中味が伴わなければ、意味がない。『強い王者に、僕はなりたい』という言葉には、そんな決意が詰まっている。ミニマム級で最強挑戦者を退けた井岡。「これを乗り越えて、スーパースターへの階段を一歩上れるんだと思って闘いました。KOもですが、盛り上げたいという気持ちでした。だから最後まで攻めました」。控え室で記者に囲まれる22歳の真摯な姿が、印象的だった。
(宮田)
8月9日 東京・後楽園ホール 東日本新人王トーナメント準々決勝 

Man of the day 米澤 重隆
(青木) ミドル級
             
              判定1-1優勢点で米澤が準決勝進出 △齋藤 志郎(ワタナベ)

 
(宮田)
8月8日 東京・後楽園ホール 日本ミドル級タイトルマッチ 

Man of the day 淵上 誠
(八王子中屋) 日本ミドル級チャンピオン OPBF1位
             
              TKO6回2分7秒 ●細川 貴之(六島) 同級4位 OPBFスーパーウェルター級11位


 6月13日に田島秀哲(西遠)をギブアップさせてから2ヶ月足らずのインターバルで、4位の細川貴之(六島)を迎え、きっちりと仕留めてみせた。長身の淵上と短躯の細川によるサウスポー対決、立ち上がりはチャレンジャーの方が勢いがあった。プレッシャーをかけてボディを狙って出る。しかし、初回終盤から淵上が自分の距離をつかみ、左ストレートをヒットしはじめるのである。接近戦に持ち込みたい細川が左アッパーで入ってくると、クリンチワークで攻撃を寸断するあたりもチャンピオンに落ち着きが感じられた。そして4回には左一発でダウンを奪った。試合後「あの一発が効いた」とうなだれた細川は、5回以降、疲労が露わで、表情も一変。そんなチャレンジャーに対して、チャンピオンの左ストレートが上に、下にと次々と突き刺さっていった。そして6回、淵上が左をまとめた場面で、レフェリー・ストップとなった。
 淵上はこれで3度目の防衛に成功。昨年10月に敵地でタイトルを奪った鈴木哲也戦を含め、ずっとKO(TKO)でベルトを守っている。そんな快進撃が自信となっているのだろう、この薩摩男児にはチャンピオンの風格が出てきたように感じる。パンチ力やスピードや反射といったボクサーの能力をはかる要素においては、目が覚めるようなすばらしいセンスを持っているようには、失礼ながら思えない。が、中屋ジムはそういう選手を伸ばすのが得意なジムだ。それぞれの持ち味を生かし、そこを伸ばし、スタイルとして確立させるのが上手い。そして、選手と指導陣の間にちゃんと信頼関係が成立している。中屋廣隆会長は「淵上はセコンドの言うことをちゃんと聞いて、それを遂行することができる。今回の勝利はそのたまもの」と愛弟子の勝利を絶賛した。
 翔子さん(20歳)という人生の伴侶を得たことを、勝利者インタビューで発表した淵上。トライアスロン選手で、高校時代はジュニア日本代表にもなったトップアスリートで、「平塚まで70km自転車で行って、泳いで、帰ってきて、一緒にご飯を食べました」とさらっと言ってのける妻の存在は、大きな刺激になっていることだろう。公私ともに充実のチャンピオン、「今年中に佐藤選手(幸治、東洋太平洋王者)と戦いたい」と明確なターゲットを挙げている。戦績は23戦17勝(8KO)6敗。
(宮田)
8月6日 東京・後楽園ホール 東洋太平洋ミドル級タイトルマッチ 

Man of the day 氏家福太郎
(新日本木村) 同級9級 日本3位
             
              TKO6回1分33秒 ○佐藤幸治(帝拳)チャンピオン WBA6位 WBC8位

 
 負けて当たり前。そう思われていた氏家福太郎がホールを大いに盛り上げた。
 佐藤幸治のボクシングはジャブが生命線であり、このジャブを外す作業が攻略の出発点となる。氏家は頭を上下左右にうまくふり、攻め急ぐことなくジャブを外し、インサイドにもぐりこんでみせた。距離を詰めてからはジャブ、右クロスをチャンピオンの顔面にヒット。5回に右クロスを決めた場面では「ひょっとしたら」の興奮がホールを包んだほどだった。6回、佐藤の猛攻に沈んだが、氏家の戦いぶりには大きな拍手が送られた。
 格下と位置づけられる挑戦者の戦いぶりはどんな試合でも興味深い。チャンピオンをどのように研究し、どこに突破口を見出すのか。「これだ」と決めた戦術を実行に移す度胸と頭脳が備わっているのか。難敵に挑むチャレンジャーのパフォーマンスは、たとえ敗北という予想通りの結果に落ち着いたにしても、観戦の大きな醍醐味となるのだ。
 氏家は安易なダーティーファイトに走ることなく、戦略的に佐藤を攻略しようと技巧の限りを尽くし、そして敗れた。チケット代に値する試合だった。
(渋谷)
8月4日 東京・後楽園ホール 日本スーパーフライ級タイトルマッチ 

Man of the day 佐藤 洋太
(協栄)チャンピオン WBC3位 WBA5位
             
              判定3−0●石崎 義人(真正) 日本4位

 
(渋谷)
8月2日 東京・後楽園ホール 東日本新人王トーナメント 

Man of the day 大場 雄二
(マナベ)フェザー級
             
              KO2R2'48"●斉藤 慎一(帝拳)


 この日は17歳とは思えぬ落ち着き払った試合運びで判定勝ちを収めた溜田剛士(ヨネクラ)や、美しい初回KO勝ちを披露した尾川堅一(帝拳)など、逸材揃いだったが、逆転KOで場内を沸かせた大場にスポットをあてたい。
 大場が独特のテンポで繰り出すジャブ、ワンツーでペースをとった初回を経て、迎えた第2ラウンドだった。まずは短躯の斉藤が前ラウンドとは一転、果敢に打って出る。そして右カウンターを見事に打ち込んで大場をノックダウンしてみせるのだ。ところが…その後突入した激しい打撃戦の中で、大柄の強打者・大場がダウンを奪い返すのである。疲労困憊の上に痛打されてキャンバスに落ちた斉藤は、何とか立ち上がったが、ダメージは明白。ここで、葛西裕一トレーナーが英断を下してタオルを投入。白皙の31歳のボクサーをさらなる傷手から救った。逆転KO勝ちを収めた大場は、これで6戦6勝(4KO)。大柄な体躯ながら、積極的に前に出て、ワンツーを打ちこむ好戦的なファイターで、9月27日の準決勝で前回紹介した千波丈二(7戦5勝(4KO)2敗)と対戦する。この強打対決は、見逃せない。(見た目はやや80年代アイドル風の髪型で、インタビューの受け答えも独特である。要チェック!)
(宮田)
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