All About the Sport                                                   専門情報サイト「ボクシング・ジーン」
Boxing-Zine

Man of the Day                        今日のベストパフォーマー
  Boxing-Zineが選ぶ、「今日のリングで最もよい仕事をした人」
10月26日 東京・後楽園ホール トゥモローズチャンピオン vol.26 スーパーバンタム級8回戦

Man of the day 中川 雄太
(ワタナベ)              
             
             TKO3R 1'24"● 宮本 達矢(平仲BS)

 この日は9試合中、実に7試合がKO決着。全試合終了が20時前と稀に見る短時間の興行でした。その中で、誰をMan of the dayに選ぶか、難しいところでしたが……。
 第5試合の70kg契約6回戦。グアム出身の29歳、在日米軍の軍人で5戦5勝(3KO)と無傷の戦績を誇るブルース・サントス(石川)を2回、1回終盤にタイミングをつかみ出した右で豪快に倒し、その後、レフェリーストップを呼び込んだ千葉県勝浦市出身の32歳、11戦6勝(5KO)4敗1分の浅野裕一(船橋ドラゴン)も“よい仕事をした人”という意味では、悪くはなかったのですが、ここは興行名『トゥモローズチャンピオン』にちなんで、将来への期待も込めて、福島県郡山市出身の22歳、中川雄太(ワタナベ)を選びました。
 沖縄の平仲ボクシングスクールに所属する宮本達矢は大分県中津市出身の23歳。ともに再起後6回戦に連勝し、この日、初めての8回戦を迎えたフレッシュな顔合わせは、2回、中川が右のショートカウンターを効かせた後、ショートの連打をフォローしてダウンを奪うと、続く3回、優勢に試合を進める中川の右アッパーがクリーンヒットしたところでレフェリーが試合を止めました。
 バンタム級で出場した昨年の東日本新人王予選では、その後、トーナメントを勝ち上がって東日本新人王になるサウスポー・堤英治(ONE・TWOスポーツ)に0-2の判定負けで敗退。それから5か月後の12月にはタイに遠征し、ABCO王者と6回戦で対戦。1回にダウンを奪って善戦しましたが、5回に2度倒し返され、TKO負けを喫しています。その経験も糧にしたかのように、今年3月には富山に飛び、地元の選手に1回TKO勝ちで再起。それから3連勝です。運動能力を感じさせる動きに、(多用はしませんでしたが)伸びるジャブが目を引きました。試合運びなど、まだ荒削りなところもありましたが、その点も、この日は好意的に映りました。10戦8勝(5KO)2敗。
(船橋)
10月24日 東京・後楽園ホール WBA世界ミニマム級タイトルマッチ12回戦

Man of the day 八重樫 東
(大橋) WBA世界ミニマム級4位・挑戦者
             
             TKO10R 2'38"
             ● ポンサワン・ポープラムック(タイ) WBA世界ミニマム級チャンピオン

 
 大橋会長、拓大時代の先輩にあたる内山高志、ジムの先輩・川嶋勝重氏に祝福される新チャンピオン
 レフェリーが試合終了を告げた瞬間、後楽園ホールが大歓声で揺れた。「ターミネーター」という異名そのままに打たれても打たれても出てくるチャンピオンとガッツリ打ち合い、詰め切っての、見事な勝利だった。今日のMan of the Day は、もちろん八重樫東。このWBA世界ミニマム級新チャンピオンの誕生で、現役男子世界王者は再び最多タイの7人となった。
 戦前は、“ド”がつくファイターのポンサワンを八重樫がアウトボックスする時間がもっと長くなると予想していた。実際、スタートからしばらく、八重樫が飛ばす左ジャブと機を見てまとめる高速のコンビネーションがとても有効で、傍目にはチャレンジャーが難なくタイトルに到達できそうに見えたのだ。しかし、戦っている本人の感触は違っていた。大橋会長が試合後の控え室で、「八重樫が初めて、1ラウンド後のインターバルで『相手パンチあります』って言ったんですよ」と明かす。そして、八重樫が冷静に振り返る。「作戦は、一ラウンドの通りです。でもそんなに甘くはなかった。前半はさばき切れるかと思っていたけれど、打ち合いに巻き込まれた感じですね」。チャレンジャーの多彩なパンチは、しっかり的をとらえているように見えた。が、チャンピオンの前進はどこまでも続き、忙しくショートブローを連発してくる。八重樫の被弾は決して少なくはなく、試合は根競べの様相になった。5度目の正直で世界王座に就き、苦労の跡が染みついたような貌をしたポンサワン。そして、4年前にアゴを2か所骨折しながら12回を戦い抜いた経験をもち、このセカンドチャンスに悲願をかける八重樫。どっちの思いが強いのか……。8回開始早々、八重樫が右アッパーから畳みかけて一気に試合を決めにかかった。レフェリー・ストップがかかっても、まったくおかしくはなかった。が、連打にさらされる中からチャンピオンが繰り出した右が、カウンターとなって八重樫の顔面をとらえるのだ。好機一転、大ピンチに。「すごいカウンター食って、もうダメかと思いました。心が折れそうになったけれど、インターバルで、(長男の)圭太郎のために頑張れ、と言われて」(八重樫)。そんな危機を乗り越えて、迎えた10回終盤。右の三連発から、八重樫が怒涛の連打。ここでようやく、レフェリーが試合終了を告げたのだった。
「あきらめなくて本当によかった」、激闘の傷跡を顔に残す新チャンピオンが安堵のため息をついた。約20年前に自身が保持したベルトを弟子が奪還し、「格別のよろこびですね」と、興奮冷めやらぬ様子の大橋会長は、さらに、「いよいよ井岡(弘樹)さんとの因縁を晴らす時がきました」と続けた。かつて「150年に1人の天才」と謳われ、WBA、WBC、両ミニマム級のベルトを獲得した大橋会長と、国内最年少世界王者となりのちに2階級制覇を果たした井岡弘樹・現井岡ジム会長とは、同時代に活躍したが、“戦わざるライバル”だった。そんなふたりが育てた世界王者、WBA王者・八重樫とWBC王者・井岡一翔が、時代を超えて幻のライバル対決−−ぜひ見てみたい。が、その前に八重樫には、激しかった戦いの疲れをしっかりと癒してほしいと思う。
(宮田)
10月18日 東京・後楽園ホール 第495回ダイナミックグローブ

Man of the day 佐藤 通也
(石丸)
             
             TKO6R2'58''
             ● 吉田 恭輔(帝拳) 日本スーパーフェザー級6位


 左フック一撃での幕切れに、場内大歓声。移籍2年目の佐藤通也が、初8回戦で痛快な6回TKO勝利を収め、日本ランク入りを確実にした。7月に最強後楽園準決勝で金子大樹(横浜光)と引き分け、敗者扱いとなった日本スーパーフェザー級6位・吉田恭輔との対戦。序盤は鋭いジャブとワンツーを軸に堅実に戦う吉田が主導権を握り、大きな波のない展開だった。ところが4回、佐藤が思い切りのいい右ストレートをドカンと打ち込み、ダウンを奪ってから一気に試合はヒートアップする。試合再開後、ダメージのみえる吉田をガンガン追い続け、続く5回も被弾を気にする様子もなく積極的に右を叩き込んでいった。そして6回終了間際、左フックをジャストミート。この一撃で吉田がキャンバスに落ちると、レフェリーはノーカウントで試合を止めた。
 佐藤はこれで14戦9勝(6KO)3敗2分。そのキャリアはなかなかに紆余曲折している。2003年11月に大阪帝拳からデビューし、2005年西日本新人王となったが、西軍代表の座は引き分け敗者扱いで逃した。2006年に1戦行った後、一度はグローブを吊るしたが、プロテストを受け直して2010年5月、石丸ジム所属でリングに復帰した。1年目は江藤伸吾(白井具志堅)、打馬王那(ワタナベ)に連敗したが、今年はこれで2連勝、しかも2KOだ。移籍、ブランクを経て、初めての日本ランク入りを確実にした32歳の痩身ファイターの今後に、注目である。
(宮田)
10月14日 東京・後楽園ホール 日本スーパーライト級タイトルマッチ
                 &
10月15日 東京・後楽園ホール 最強後楽園決勝スーパーライト級

Man of the 14th 和宇慶 勇二
(ワタナベ) 日本スーパーライト級1位
             
             
判定3-0(99-92 98-93 97-93)
             ● 長瀬 慎弥(フラッシュ赤羽) 日本スーパーライト級チャンピオン

Man of the 15th 岩渕 真也
(草加有沢) 日本スーパーライト級3位
             
               TKO1R1分37秒
             ● 麻生興一(角海老宝石) 日本スーパーライト級4位


(船橋)
10月10日 東京・後楽園ホール ダイヤモンドグローブ

Man of the day 戸部 洋平
(三迫)東洋太平洋スーパーバンタム級13位
             
             判定3-0(78-75 77-75 77-76)
             ● 河野公平(ワタナベ) 日本スーパーバンタム級4位 東洋太平洋同級10位


 日本スーパーバンタム級チャンピオンの芹江匡普(伴流)が盤石のV5を達成したが、世界挑戦をアピールできたかといえば内容はイマイチ(次回に期待!)。そこでMan of the dayはセミで河野公平(ワタナベ)を下したプロ3戦目の戸部洋平(三迫)に決めた。採点は1─3ポイント差だったが、私の印象ではもっと差が開いてもよかったように思う。つまり快勝と表現しても構わないボクシングだった。
 試合のポイントは、身長とスピードを生かしたアウトボクシングを得意とする戸部が、前に出る力の強い河野をさばき切れるか、というところにあったと思う。ふたを開けてみれば戸部は河野をよくさばき、最後までペースを明け渡すことはなかった。
 スピーディーなフットワークや、よくヒットしたカウンターの右もさることながら、最後までペースダウンしない安定した戦いぶりに驚いた。プロ3戦目の選手があのペースで試合を進めれば普通は後半に落ちる。しかも相手はタフボーイ♂ヘ野だ。戸部が最終的に勝つにしても、後半に河野の追い上げを食らい、前半の貯金で辛くも逃げ切るというパターンかな、と考えていた。
 ところが戸部は違った。3回に一瞬ペースダウンしそうになりながら、4回からはねじを締めなおし、攻撃的なアウトボクシングを展開した。自分から積極的に仕掛け、手数をよく出していたから「足を使って逃げた」という印象とも無縁だった。
 試合後のコメントにも好感を持った。
「もしかしたら負けたかと思った。離れ際に少しパンチをもらってしまったので。右は当たったけど合わせることしかできなかった。右ストレートを当てたあとのコンビネーションが出なかったところが反省点です」
 戸部の試合がある日は必ずホールに行こう。そう決意させるファイトだった。
(渋谷)
10月4日 東京・後楽園ホール 東洋太平洋ライト級王座決定戦

Man of the day 荒川 仁人
(八王子中屋) WBA/WBCライト級7位
             
             判定2−1(115-114 115-113 112-115)
             ● ジェイ・ソルミアノ(フィリピン) OPBF1位 


 3度防衛した日本ライト級王座を返上した荒川仁人が、東洋太平洋同級王座を手中に収めた。
 WBA
WBCともに7位に位置する者として、アジア最強を証明すべく、未知数のツワモノと敬遠されてきた無敗のOPBF1位、ジェイ・ソルミアノと正々堂々と勝負しようという、本人および陣営の男気、潔さに、まずは拍手を送りたい。そして、大苦戦ながら12回をあきらめることなく戦い抜いたこともまた、賞賛されてしかるべきだと思う。
 しかし、
OPBF1位の座で待たされ続けてきたこの比国のサウスポーは、噂どおりの強敵だった。2回序盤に、ソルミアノの左フックで荒川は痛烈なダウンを喫する。ベビーフェイスを歪ませて苦笑いする様子に、ダメージは明らかだった。そもそも荒川にとって、対サウスポーは新人王の時以来。「左をもらわないよう意識していたのに、もらってしまった。今日は自分の距離感を生かせなかった」と振り返る。が、この大ピンチを何とかしのぐと、ラウンド終盤にはヒットも奪い始め、次の3回から6回まで多彩なコンビネーションで支配してみせるのだ。ボディブローを多用し、スタートから飛ばしているソルミアノの失速を狙う…が、フィリピン人は予想以上にタフで、後半戦で再び攻勢に転じた。7回に痛烈な右ボディアッパーを荒川のストマックに決めると、その後も重く的確な右アッパーを中心にヒットを量産して優勢をアピールし続ける。荒川は被弾で左まぶたは大きく腫らし「10ラウンドくらいからは見えなかったから、近づくしかなかった」た状態で、なんとか最終ラウンド終了のゴングを聞いた、おしなべてみればそんな展開だった。痛々しい姿の前日本王者が勝者のコールを聞く可能性を、チラリとでも考えた人は、あの場にどれくらいいただろう。13戦目での初遠征にして堂々と力量を披露したフィリピン人の30、その意見が多数派に違いない。私見も116-111でソルミアノ。公式採点に驚き、試合メモを見返した。少しでも優劣を迷ったラウンドをすべて、ホームで戦っている荒川につけて計算しなおしてみると、1ポイント差で荒川の勝利、という数字が出た。ありえない判定、ではなかったと、言わざるを得ない。
 とにもかくにも、採点はあくまでジャッジの仕事。ボクサーは戦うことが仕事。だから、敵地で倒し切れなかったフィリピン人ではなく、序盤の大ピンチをしのいでフルラウンドを戦いり、ジャッジ2者の支持を得た荒川が、この日の
Man of the Day。ではその傷だらけの勝者の、試合後のコメントを。「敵地だったら、採点は逆だったと思います。世界7位に入っているけれど、その力はないのだとはっきりわかりました。ディフェンスが悪すぎます。こういうダメージを負う試合をしていると上に行けないですね。相手の出方にどれだけ対応できるかと、ディフェンス力、それがこれからの鍵です。…今日は相手が強いので、駆け引きはとても面白かったです。(OPBFベルトを腰に巻かず肩にかけたのは)まだチャンピオンに相応しくないと思って。そういう意味で腰には巻きませんでした」
(宮田)
10月1日 東京・後楽園ホール 角海老ボクシング スーパーライト級4回戦

Man of the day 岡田 博喜
(角海老宝石) スーパーライト級
             
             TKO2R 0'51"
             ● 中野 和也(花形)

 ともにアマキャリアを持つデビュー選手同士の4回戦。スピーディな攻防を展開して迎えた2ラウンド、岡田博喜が「サウスポー対策で練習していた」という右カウンターを中野和也に立て続けにヒット。最後もタイミング抜群の右が正面から強烈に捉えると、ヒザから崩れた中野を見て、レフェリーが試合をストップした。
 2007年、駿台学園高校3年時にインターハイ、国体を制し、2冠を果たしている岡田。ボクシングを続けるために進学した明治大学は中退し、実戦は「高校3年の国体以来」だった。岡田は「緊張はしました。いきなりセミセミだし、本当は第1試合とかで終わらせて、さっと帰りたかったんだけど」と苦笑い。「イメージどおりではなかった。もっと左を上下に散らして揺さぶったり、サイドから攻めたり、相手を崩してからの右を佐藤(直樹)トレーナーと練習してきたので」と反省したが、大学(中央大学)アマ経験もあるサウスポー相手のデビュー戦としては上々ではないか。今後については「新人王を獲って、それからですね。来年、ばっちり全日本新人王を獲りたい」と力強く語った。
(船橋)
<archives>
2011年10月
2011年9月
2011年8月
2011年7月
2011年6月
2011年5月