こんにちは。
JBC日本ボクシングコミッション・リングアナの須藤尚紀です。
今回は「KO(ノックアウト)」に触れてみます。
まずは前回の解決編から…
前回末筆した…
「noble art」(単語で直訳すると崇高なる芸術)を英和辞典で和訳すると…?
たくさんの反響をいただきました。ありがとうございます。
そうなんです。「拳闘、ボクシング」と出て来ます。何だか嬉しいので触れました。本気でビックリされた方が多く、筆者冥利に尽きます。
さて今回は3回目。
ボクサーに『3回目』と言うと、恐らくすぐに思い描くのが『3回目のダウン』…3ノックダウン・ルール。
ダウンする側?
ダウンさせる側?
どちらをすぐにイメージしましたか?
悩まず、すぐに「ダウンさせる側」をイメージしてもらいたいものです。
その3ノックダウン・ルール(4回戦は2ノックダウン)で自動的にKOとなるのが現在のJBCルール。あとはダウン後の10カウントがKOなのはご存知の通り。リングアウト(場外)での20カウント、ダウン後のタオル投入もKOです。
「最近はすぐ(レフェリーに)止められるからKOがなくなった、TKOばかりになってしまうよ」
関係者から詳しいファンまで、あちこちで時々耳にするセリフですが、私はこれを聞くと…「あれ?皆さんTKOがお嫌いですか?TKOが聞いたら泣きますよ、可哀想じゃないですか」…と思ってしまいます。
KO、TKOを語る前に、感動的な判定勝ちもある事は頭に入れておくとして…
野球で投手戦よりも乱打戦を好むファンが多い様に…
あるいは、サッカーでの厳しい防御テクニックを観るよりもゴールネットが揺れる興奮が望まれる様に…ボクシングではノックダウンのシーンが好まれるものです。
さて、問題は試合結果、公式記録。
どうもKOよりTKOは低く見られている様でなりません。ボクサーからもTKOよりKOを重んじる差別を感じます。
そんな時、私はこう整理して説明しています。
〜KOとTKOは管理上の「区別」で「差別」ではない。そもそも国や団体でルールの区別が違うし、日本国内でも若干の変遷がある。だから戦績にはKOもTKOもまとめて「KO勝利」にしてある。〜
…と。
さらには、どうしても「差別」したい輩にはこう解説すると納得してくれます。
1)ルールで必然的に試合が終わるのがKO。(先に書いた10カウント、3ノックダウン等)
2)レフェリー判断で終わるのがTKO。(戦況から選手の健康管理を鑑みたレフェリー・ストップ等)
3)KOの手続きを省略するレフェリー判断で終わるのもTKO。(10カウントをする必要がない失神状態等)
つまり、多くの関係者が誤解する
KO>TKO
という思い込みを、上記の
3>1>2
TKO>KO>TKO
…という説明で価値観は整理してもらえる。
「T」が付く事での上下の「差別」はないのである。
「結果」と「過程」という価値観には前回触れました。
そもそも、KOかTKOかという価値観があるとすれば、それは公式記録の「結果」へのこだわりが表れた価値観にも見えますが、実は、そんな…どの様に終わったのかを認めてもらいたい「過程」にこだわる価値観…なのだと思います。
『ゴール(結果、目的)は一つ、ルート(過程、方法)は無限』