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 13階級の日本チャンピオンがそれぞれ最強挑戦者を迎えて行われる毎年恒例のチャンピオンカーニバルは今年で34回目。下記のとりすべての日程を終了し、日本プロボクシング協会チャンピオンカーニバル委員会は各賞を選考、発表しました。

最優秀選手賞 日本スーパーフェザー級チャンピオン 金子大樹(横浜光)
     技能賞 日本フライ級チャンピオン 粉川拓也(宮田)
     殊勲賞 日本ミドル級チャンピオン 胡 朋宏(横浜光)
     敢闘賞 日本ライトフライ級チャンピオン 田口良一(ワタナベ) 
 
■日程■
1月12日(土) スーパーウェルター級
柴田 明雄(ワタナベ) チャンピオン OPBF2位
1981年11月19日、神奈川県横浜市出身。31歳。2003年8月デビュー。27戦19勝8KO7敗1分。
TKO8R2'53''
●細川 貴之(六島) 挑戦者同級1位 OPBF4位
1984年12月14日、大阪府八尾市出身。27歳。2002年12月デビュー。34戦22勝7KO9敗3分。
※柴田が2度目の防衛に成功

柴田よりアタマ一つ分くらい短躯のサウスポー細川が、間合いをとりながら巧みに左ストレートを上下にヒットして初回を制し、波に乗ります。3回にはさらに攻撃の手を強めて試合はヒートアップします。ここで柴田も右カウンターを狙いにいきました。4階中盤、その柴田の右ストレートが炸裂。仕留めにかかる柴田に細川もアッパーで応戦します。緊迫のやりとりの中、柴田は右ストレートでポイントをとりますが、被弾で左まぶたをカット。むかえた6回中盤、柴田がラッシュ。一気に終了に持ち込むかと思われましたが、チャレンジャーは粘りました。細川もこの回、左目じりをパンチでカット。試合は我慢比べの様相になります。そんなチャレンジャーはプレッシャーをかけ続け、8回、左ストレートで攻勢をかけました。ところがそこへ、柴田が右をクリーンヒット。畳み掛けてダウンを奪います。残り30秒、ダウンを追加。さらに追撃をうける細川を、レフェリーが救い出しました。



2月11日(月) スーパーライト級
岩渕 真也(草加有沢)チャンピオン OPBF2位
1985年7月16日、埼玉県八潮市出身。27歳。2004年2月デビュー。23戦20勝16KO3敗。
[TKO8R2'00'']
●細川 バレンタイン(宮田)挑戦者同級1位 OPBF6位
1981年4月16日、宮崎県宮崎市出身。31歳。2006年5月デビュー。21戦16勝8KO2敗3分。

※岩淵が3度目の防衛に成功

3分間の偵察戦から、2回、細川のジャブなしの右ストレートがヒットします。ハードパンチを持つサウスポー岩渕は、それを狙いすぎてか手数が極端に少なく、細川の方が注意深くも細かいパンチを出していました。5回終盤、岩渕が左ストレートを機に細川をコーナーに詰めます。が、細川はよく見て決定打を許しません。このラウンド、岩渕は被弾で右目ぶたをカット。鼻血もみられます。7回、強引に攻めてきたチャンピオンに細川は右ストレート、右アッパーをヒット。ラウンド中盤には岩渕が右アッパーから反撃しましたが、それも長続きはしませんでした。しかし8回。強打が、すべてを覆しました。チャンピオンは開始早々に見事な左ストレートでチャレンジャーをノックダウン。細川はボディワークで粘りましたが、ついにロープ際でアゴを跳ね上げられ、レフェリーストップとなりました。
3度目の防衛に成功した岩渕は「苦戦するとは思っていたので、こういう結果になってよかったです。チャンスがあったらいくというのがスタイルなので、それをいつもどおりできたと思います。相手が1位なんで、プレッシャーはありました。反省点は多いので、決して満足はしていません。次はベルトを返上して、OPBFタイトルをやりたいと思います」


■ミドル級■
●佐々木 左之介(ワタナベ)チャンピオン OPBF1位
1987年9月9日、青森県三戸市出身。25歳。2010年3月デビュー。12戦11勝5KO1敗。
[TKO6R0'47'']
胡 朋宏(横浜光)挑戦者同級1位 OPBF3位
1988年7月25日、兵庫県西宮市出身。24歳。2008年7月デビュー。12戦10勝10KO2敗。

※胡がタイトル獲得
間合いのとりあいから先にジャブを出していったのは佐々木の方でした。しかし、胡は丹念に左をついて様子をうかがい、初回終盤になると右アッパーを合わせてみせます。2回になると胡の左がより冴えて、右のクリーンヒットにつなげます。2回終了間際には右クロスのクリーンヒットからダウン寸前にまでチャンピオンを追いこみました。佐々木はよく手を出しているのですが、ムダナ動きが多いのです。一方の胡はよく相手を見て、的確な攻撃をみせました。ところが3回、佐々木が盛り返します。残り1分のところで左フックを打ち込み、胡を後退させました。苦しくなった胡ですが、ボディブローを多用して踏みとどまります。そして5回残り1分、胡は左ボディブローを効かせた後、左フックで顔面を叩いて佐々木を棒立ちにします。ロープ際で畳み掛け、チャンピオンをダウン。そして6回開始直後に右アッパーをクリーンヒットした胡は、攻撃の手を緩めず、連打でレフェリーストップを呼び込みました。2009年全日本新人王の胡は、「新人王獲ったらもう、とんとんと日本チャンピオンになると思ってたけど」、その後2度の負けを経験。それを糧にしての、タイトル初挑戦での戴冠となりました。戦績は13戦11勝(10KO)2敗です。
「思ったより相手が巧かったです。しぶとくて、疲れましたね。 負けも経験して、いい重たいベルトになりました。挑戦者なので、がんがんくらいついていこうと思いました。自分を抑えて、後半にもっていこうとおもったのですが、途中でおさえきれなくなってしまいました。」


2月25日(月) ライト級
加藤 善孝(角海老宝石)チャンピオン OPBF1位
1984年11月23日、茨城県日立市出身。28歳。2004年6月デビュー。28戦23勝7KO4敗1分。
[判定3-0]96-94 97-94×2
●鈴木 悠平(真正)挑戦者同級2位 OPBF10位
1989年9月18日、千葉県船橋市出身。23歳。2008年6月デビュー。13戦11勝8KO2敗。
※加藤は4度目の防衛に成功

最強後楽園優勝者・鈴木のタイトル初挑戦。スタートから果敢に出ていきますが、動きは堅く、冷静に見ていた加藤が、初回中盤には右を合わせるようになりました。動きが大きい鈴木に対し、どっしりと構える加藤が右ストレート、左ボディフックをヒット。とはいえ、詰めにいく様子はありません。6回中盤、そんな中でずっとワンツーで攻撃の糸口を探していた鈴木の右ストレートが、加藤の顔面をとらえました。加藤はあわやダウンの大ピンチ。しかしそこからよく立て直し、ラウンド終盤には左右ボディブローで反撃しました。鈴木の若々しく挑戦者らしい攻めは徹頭徹尾続きました。が、ハイペースで防衛を続ける加藤のボクシングは堅牢でした。


2月26日(火) ミニマム級
原 隆二(大橋)チャンピオン OPBF1位 
1990年7月10日、静岡県伊東市出身。22歳。2010年2月デビュー。13戦13勝10KO。

[判定3-0]95-94×2 97-94
岩橋 裕馬(森岡)挑戦者同級1位 OPBF5位
1988年8月1日、大阪府箕面市出身。24歳。デビュー2007年12月。14戦9勝1KO4敗1分。
※原が初防衛に成功

2月27日(水) フライ級
粉川 拓也(宮田)チャンピオン WBC10位
1985年4月5日、東京都千代田区出身。27歳。2005年6月デビュー。21戦20勝11KO1敗。
[TKO10R0'12'']

●池原 繁尊
(横浜光)挑戦者同級1位 OPBF5位
1981年12月29日、沖縄県うるま市出身。30歳。2003年9月デビュー。29戦23勝19KO4敗2分。
※粉川が3度目の防衛に成功

 
3月16日(土) バンタム級(王座決定戦 岩佐亮佑が返上)■
大場 浩平(真正)WBC11位
1984年11月19日、愛知県名古屋市出身。28歳。2002年6月デビュー。35戦32勝12KO2敗1分。
[判定3-0] 96-94 97-93 98-93
●ゼロフィット・ジェロッピ瑞山(千里馬神戸)日本同級1位
1979年12月11日、フィリピン出身。33歳。2005年3月デビュー。31戦25勝9KO3敗3分。
※大場が新チャンピオンに
 
 
  3月25日(月) ■ウェルター級
○高山 樹延(角海老宝石)日本同級2位
1985年12月9日、秋田県秋田市出身。27歳。2007年7月デビュー。18戦17勝7KO1敗。
[ 判定2-1 ]96−94 97−95 94−96
●尹 文鉉(ドリーム)日本同級1位
1983年10月26日、埼玉県蕨市出身。29歳。2007年9月デビュー。17戦14勝2KO2敗1分。
※高山が初防衛に成功
しずかな立ち上がり、と見えたのはほんの十数秒間。ジャブの差し合いから高山が積極的に手を出していきます。上下への左ダブル、左右アッパー、右ストレートも。挑戦者の尹の方は落ちついていますが、やや「見過ぎて手がすくないのが気になります。接近戦の中、2回中盤あたりから尹の右フックが当たり出し、3回終盤はさらに攻勢を強めてポイントを獲りますが、全体的には手数で上回る高山の方が見栄えはします。そんな前半戦を経て、6回から尹がプレスを強め、ボディブローを効果的に混ぜながらチャンピオンをロープに詰める場面をつくりました。8回終盤には左フック、右フックをクリーンヒットします。しかし終盤はチャンピオン高山が強い右とコンビネーションで獲り返し、10回も足をつかう尹を追いこんで試合を終えました。
 

3月31日(日) スーパーフライ級
○帝里 木下(千里馬神戸)チャンピオン WBA7位 OPBF2位
1985年12月17日、大阪府大阪市出身。26歳。2008年5月デビュー。16戦15勝3KO1分。
[判定3−0]   97−92・97−92・97−93
●白石 豊人(協栄)挑戦者同級1位 OPBF5位 
1986年3月8日、福岡県北九州市出身。26歳。2005年6月デビュー。30戦23勝11KO6敗1分
※帝里は3度目の防衛に成功

  4月3日(水) ライトフライ級王座決定戦
〇田口 良一(ワタナベ)WBA6位
1986年12月1日、東京都大田区出身。26歳。2006年7月デビュー。19戦17勝8KO1敗1分。
[判定 3−0] 97−93・98−92・99−92 
知念 勇樹
(琉球)OPBF7位 日本3位
1984年7月24日、沖縄県うるま市出身。28歳。2008年7月デビュー。13戦13勝6KO。身長172p
※田口が空位のタイトルを獲得

黒田雅之(川崎新田)が返上したベルトを賭けた、世界ランカー田口と、無敗の知念の戦い。昨年3月に黒田と引き分けて以来2度目のタイトルマッチとなった田口は、この日は課題としていた「集中力」を切らせず、終始ペースをとって素晴らしいボクシングをみせました。痩身のハードパンチャー、知念のカウンターだけは警戒していたと言いますが、田口が大きなトラブルに見舞われるような被弾はありませんでした。知念のパンチで目立ったのは4回の左フック。6回に右アッパーをいくらかまとめ、10回にも右アッパーをクリーンヒットしましたが、チャンスに結びつけることはできませんでした。13戦無敗(6KO)とはいえ、この3年間は外国人とばかり戦って初のタイトルマッチを迎えた知念は、経験が十分だったとは言えないでしょう。スタートから飛ばして終盤には疲れがみえた田口ですが、左フック、右ストレートの的確性、手数で優位を保ち、9回には左ボディブローから右ストレートを顔面に決めて山場もつくりました。明白な判定勝ちで念願のタイトルをつかんだ田口。ルールに則り、次戦ではWBA13位の角谷淳志(金沢)を迎えることが濃厚です。その先には、この日リングサイドで観戦したスーパーホープ、井上尚弥(大橋)と対戦する意思があることを、田口は試合後に明かしました。戦績はこれで20戦18勝8KO1敗1分。
 
 
 
4月6日(土) スーパーフェザー級
〇金子 大樹(横浜光)チャンピオン OPBF1位
1988年6月17日、愛知県田原市出身。24歳。2005年11月デビュー。21戦16勝9KO2敗3分TKO9R 1'39"
●玉越 強平(千里馬神戸)挑戦者WBC7位 WBA8位
1980年12月30日、兵庫県神戸市出身。1999年1月デビュー。43戦30勝12KO7敗6分。

いま一番の注目株・金子大樹が、手練れの世界ランカーを攻め切り3度目の防衛に成功。連続KO勝ちを5に伸ばしました。今日のチャンピオンは開始からプレスをかけて出ます。金子が「相手はもっと出てくるかと思っていましたが」と言えば、一方の玉越は「あれほど好戦的とは思ってなかった」と。金子はジワリと追いながら相手の手鼻、打ち終わりを狙い、初回中盤には右のストレートも合わせます。2回からは玉越が巧みなクリンチを絡めて若きチャンピオンのペースを乱し、下がりながらも左ジャブ、至近距離の左ボディブローなど細かいヒットを挙げていきます。しかし、3回終盤にバッティングで右まぶたが切れた玉越は視界難に見舞われ、4回から金子が試合を主導します。右アッパー、離れ際の右ストレートなどをクリーンヒットし、このラウンドには玉越の左目上をパンチで切り裂きました。両目ぶたから出血している玉越は5回、攻めに出て左ボディブロー、左フックをヒット。しかしすぐに反撃にあいました。離れ際に金子のスリークォーターの左、左フックがクリーンヒット、玉越たまらずダウン。痛烈なダウンに試合終了は近いと思われましたが、キャリア14年、通算4度目の日本王座挑戦へ、大ベテランの挑戦者はものすごい執念をみせました。金子の左ボディブロー、右ストレートが次々と襲いかかる中、玉越は戦意を失わず、パンチを返し続けます。しかしダメージは明らかでした。最後はコーナーで金子の連打にさらされたチャレンジャーを、ようやくレフェリーが救い出しました。
「見たまんまです。しゃあないです」と潔く話した玉越は、これで45戦31勝12KO8敗6分。かつてスーパーバンタム級で日本王座3度、OPBF王座に1度挑戦していますが、今回も含めてついにベルトを巻くことは叶いませんでした。
3度目の防衛に成功した金子も、控え室で反省点ばかりを口にしました。「満足度は全然。力づくだったので。小さいパンチをまとめることができなかった。クリンチにも精神的に乱されてしまって、若いな、と。改めて自分の悪いところがよくわかってよかったです。次の相手は今日の自分を見てそこをついてくると思うので、もっと成長しないと」。豊かな才能に、この真摯さ冷静さを持ち合わせる24歳のチャンピオン。次戦は8月に予定されています。

4月8日(月) フェザー級
○天笠 尚(山上)チャンピオン WBC13位 OPBF1位
1985年10月18日、群馬県太田市出身。27歳。2004年12月デビュー。28戦22勝15KO4敗2分。
[判定 3−0]  95−94・96−93・97−92 
●横山 大輔(ワールドスポーツ)日本同級2位 OPBF8位
1986年6月27日、広島県福山市出身。26歳。2006年5月デビュー。18戦14勝6KO4敗。
 

  
 
4月17日(水) スーパーバンタム級
○大竹 秀典(金子)チャンピオン IBF12位 OPBF4位
1981年7月6日、福島県郡山市出身。31歳。2005年12月デビュー。22戦18勝9KO1敗3分。
負傷判定2−0 8R1'40'' 76−75 77−75 76−76
●土居コロニータ(ヨネクラ)挑戦者1位 OPBF8位
1978年5月7日、東京都立川市出身。34歳。1997年3月デビュー。47戦26勝9KO13敗8分。
※大竹が2度目の防衛に成功

ジャブでさぐりをいれるのはチャンピオンの大竹。土居は遠い距離からのコンビネーションで上下にパンチを送り込み、大竹はその距離をつぶしにかかります。しかし2回終盤に入ったところで、土居が右オーバーハンドをクリーンヒット。右アッパーをすぐにフォローします。3回には大竹の出端に右アッパーを合わせてみせ、とにかく土居は大竹を遠ざけることに成功。自分の距離でストレート、ロングアッパー、ボディブローをまとめてみせます。5回中盤、バッティングで土居の眉間から出血。ドクターチェックが入った後、両者ともにペースを上げました。ベテラン土居、頭突きはまったく厭いませんが、傷を負ったのは自分の方でした。6回、土井が右フックをクリーンヒットした直後でした。大竹の右で土居の動きが一瞬とまります。やや攻撃が雑になってきた土居にさらに大竹の左ジャブ、左フックがヒット。流れははっきりと大竹に傾きました。7回、大竹はすでに挑戦者のパンチは見切っています。多彩な左を軸としたコンビネーションで大竹は優位にたちます。この回、額にさらにバッティングで新たな傷ができた土居は視界難に。8回、大竹はそんな挑戦者に右を効かせてみせています。しかし出血がひどく、ドクターチェックの後、続行不可能との判断が下されました。その前に、バッティングで大竹に減点1が科されています。


      
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