その名のとおり、笑顔と笑い声が絶えないジムである。誰より笑っているのは、ほかでもない伊藤洋幸会長だ。
「まず自分が楽しく。そうでないとみんな楽しくないでしょ」
運動不足解消、シェイプアップ、ゆくゆくはスパーリング大会出場も。それぞれの目的、目標に向かって、“ボクシングを楽しむ”。それが、スマイルボックスの旗印である。
「ボクシングにはもちろん、勝利を目指すストイックな世界があります。でも、それだけじゃない。一般の人たちにとっては、ストレスは解消できるし、体も締まるし、仲間だってできる。いいことがいっぱいあるっていうことを、もっとたくさんの人に知ってほしいんですよね」
かつてはそのストイックな世界で戦い、トレーナーとして10年、プロボクサーを育てる充実感も味わった。その上で至った、誰もが楽しめるボクシング、という理想である。
そもそも「ボクシングで成功して、社長になる」のが夢だったという伊藤さん。大志を抱いて滋賀から上京し、大学で経営を学びながら、宮田ジムからプロデビューも果たした。が、現実は甘くはなかった。引退後は、一般企業に就職したものの、請われてプロのトレーナーに。途中、現役に復帰した時は、老練なテクニックでB級トーナメントを勝ち上がり、話題にもなった。が、運命のいたずらか、決勝の相手がジムの教え子。伊藤さんは棄権して、そのままグローブを吊るすのである。トレーナーとしても定評があった伊藤さんは、しかし、「社長になる!」という夢を捨ててはいなかった。33歳でベンチャー企業に就職。気概のある若者たちがバリバリとプランを形にしていく環境の中、「ボクシングジムの経営、こうすればできるんじゃないか、っていうビジョンができて」、いよいよ2006年9月、35歳を目前に、新小岩に「Smile Box」をオープンさせたのだった。
「最初の3ヵ月で会員さんは100人を超えました。けど、それは勢いだけ。そこから伸びたのは、試行錯誤と努力の結果です」。
新小岩店は最寄りの駅から徒歩15〜20分という立地ながら、常時だいたい170名が在籍。延べ600名が一度は門をくぐっている。 開設当時はリングもサンドバッグを吊るす鉄柱も、正真正銘の手作りだったが、3年目には職人の手が入り、立派なH鋼の柱が大小6基のバッグを支えている。昨年10月には、2号店となる「Smile Box 足立店」を、舎人ライナー扇大橋駅徒歩1分という駅近にオープン。ここは数々の一般人ボクサーのスパーリング大会の会場としても知られるホールであり、試合仕様の立派なリングと広々としたフロアが大きな売り。この2号店がもつポテンシャルを十分に生かすこと、それが目下、伊藤さんの懸案だ。
「ちゃんと経営していくにはやっぱり、どれだけお客さん、つまり会員さんたちの気持ちを満たすか、っていうことだと思うんですよ。会員さん全員の目標をかなえること、それが僕の目標」。
小中学生や主婦、サラリーマン。人それぞれに違う体力や目的、通いやすい時間帯にあわせて細かくコース分けし、できるかぎり低料金にして敷居を下げたのも、その目標達成のための工夫の一つ。とにかくオプションがたくさんあるので、ぜひホームページをご覧いただきたい。
「仕事帰り、会社では大変なことがあって疲れ切っていても、ここへくればなんか楽しい。ここにくれば笑顔で一日を終えられる、そういう場所でありたいと思っています」。
会員さん同士の交流会を定期的に開いたり、天井にはなぜかミラーボールが下がっていたり、受付カウンターには甘いお菓子が置いてあったり、それでいてボクシングビデオ・ライブラリーにはマニアックな一本が指し込まれてあったり、と楽しい仕掛けはいっぱいある。が、きっと会員さんたちの心をつかんで離さないのは、伊藤会長の笑い顔と、不釣り合いなくらいの本格ミットではなかろうか。多忙な社長業の合間をぬって練習生と向き合う伊藤さん。そのミットは、見事である。見事に滑らかなコンビネーションを引き出す。
「トレーナーは天職だと思います。この3分の間にどれだけ相手を満足させるかが、勝負だと思って、いつも向き合ってます」。

オープン6年目の新小岩店は、手作り感あふれるアットホームな雰囲気が魅力。
時には懇親会場へと早変わり

スパーリング大会会場としての機能も備え、広々とした足立店。
試合仕様のリングでマスにも気合いが入る
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会長夫人でもある亜矢子さん(左)と新小岩店チーフトレーナーの下立晃大さん

足立店のチーフトレーナーは眞尾聡さん(右)。眞尾夫人もヘルプに駆けつける
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