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 日本ランカーが日本タイトル挑戦権をめぐって火花を散らすトーナメント、『最強後楽園』が7月5日、開幕する。ランキングに入ったからといってそう簡単にはめぐってこない王座挑戦のチャンス。この勝ち抜き戦はそれを手に入れる正攻法、白熱しないわけがない。本欄で十分に予習し、ぜひとも後楽園ホールに足を運んでお楽しみいただきたい。
 10月15日 東京・後楽園ホール 2011年最強後楽園決勝結果
  
ライトフライ級決勝8回戦      
 〇田口良一(ワタナベ)
1位 <TKO6R0’23”> ●木村悠(帝拳)2位
 
スーパーフライ級決勝8回戦
 △帝里木下(千里馬神戸)5位  <負傷引分4R1'06"> △翁長吾央(大橋)2位
  
※前半の負傷で続行不可能、優勢点で帝里が優勝者扱い

スーパーバンタム級決勝8回戦
 〇石本康隆(帝拳)4位  <判定3-0 77-75 78-74 79-73> ●塩谷悠(川島)1位 

スーパーフェザー級決勝8回戦
 〇金子大樹(横浜光)2位  <KO2R1'54''> ●松崎博保(協栄)7位

スーパーライト級決勝8回戦
 岩渕真也(草加有沢)3位 <TKO1R1'37''> ●麻生興一(角海老宝石)4位 

<三賞>
 〇最優秀  岩渕真也  〇技能賞 石本康隆  〇敢闘賞 金子大樹
 2011年最強後楽園日程
  7月5日   ライトフライ級、スーパーフライ級、スーパーバンタム級の準決勝
  7月6日   スーパーフェザー級、スーパーライト級の準決勝
  10月15日  全5階級の決勝


  会場:東京・水道橋 後楽園ホール
 10月15日 決勝カード  会場:東京・水道橋 後楽園ホール
ライトフライ級      田口良一(ワタナベ)日本2位 VS 木村悠(帝拳)日本4位
スーパーフライ級    翁長吾央(大橋)日本2位 VS 帝里木下(千里馬神戸)日本6位
スーパーバンタム級   塩谷悠(川島)日本1位 VS 石本康隆(帝拳)日本4位
スーパーフェザー級   松崎博保(協栄)日本8位 VS 金子大樹(横浜光)日本2位
スーパーライト級     麻生興一(角海老宝石)日本4位 VS 岩渕真也(草加有沢)日本3位
                                       ※ランキングは7月27日発表分
 最強後楽園とは                                       文/渋谷 淳
 7月5日、日本タイトル挑戦権獲得トーナメント「最強後楽園」が開幕する。まずはビギナーのために日本タイトルマッチの仕組みと「最強後楽園」とは何かを解説しよう。
 まずはタイトルマッチだ。日本チャンピオンの挑戦者は基本的にランキングによって決まる。チャンピオンは1位から12位までのランカーから挑戦者を選び、防衛戦に挑む(これを選択試合という)。ただし、これだとチャンピオンが戦いやすいランカーばかりを選び、強くて勝てそうにないランカーを避けてしまう危険性がある。そこでチャンピオンはランキング1位の選手との防衛戦が義務付けられる(これを指名試合という)。チャンピオンは指名試合と選択試合を交互に行う─というのが基本路線だ。
 ところがこのランキングというものがなかなか難しい。たとえば4位の選手がいたとしよう。この選手が連勝を重ねればランキングが上がるかと言えば、必ずしもそうではない。上位の選手が負けなければ上がりようがないし、世界ランカーがスッと日本ランキングの上位に入ったりもする。ならば1位から3位の選手、あるいは世界ランカーと対戦して勝てばいいじゃないかと思うかもしれないが、上位ランカーは下位の選手となかなか対戦してくれないし、上位選手になればなるほどファイトマネーも上がっていく。その結果、ランク入りしながら何年もタイトルマッチに恵まれない、というボクサーが出てきてしまうのだ。
 だったら、しのごの言わずにトーナメントで挑戦者を決めたらいいじゃないか! そう、前置きが長くなってしまったけれど、このような事情で誕生した大会が最強後楽園なのである。
 トーナメントは日本タイトル全13階級を半数に分けて、隔年で開催される。今年はライトフライ、スーパーフライ、スーパーバンタム、スーパーフェザー、スーパーライトの5階級。勝者は来年最初のタイトルマッチでチャンピオンに挑戦する。
 昨年の最強後楽園のバンタム級では無敗のホープ、岩佐亮佑(セレス)が優勝。チャンピオンの山中慎介(帝拳)と歴史に残る名勝負を演じた。今年は岩佐のようなスーパーホープは存在しないが、順番に見ていくとなかなか興味深い。
 以下、5階級の顔ぶれを簡単に紹介をしておこう。なお1回戦は7月5、6日で、決勝戦は10月15日に開かれる。会場はもちろん後楽園ホールだ!
各階級の出場者および展望                                文/渋谷 淳
【ライトフライ級】
準決勝(7月5日)
田口良一(ワタナベ)VS久田哲也(ハラダ)
木村悠(帝拳)VS瀬川正義(横浜光)

 このメンバーで気になる存在と言えば元アマ王者の木村だ。プロではデビュー以来「苦しんでるなあ」という印象の試合が多く、チャンピオン揃いの帝拳の中で出遅れている印象は否めない。それだけに今大会にかける意気込みは相当なものと見る。瀬川は2度目のタイトルマッチ挑戦を目指すサウスポー。昨年10月に現WBC世界ミニマム級王者、井岡一翔(井岡)と王座決定戦を争い、力の差を見せつけられての10回TKO負けに終わった。テクニックで木村、スピードなら瀬川といったところか。実力は甲乙つけがたく、緊張感のあふれる試合となるだろう。
 田口は09年に瀬川に敗れ、これがキャリア唯一の黒星。もっか10連勝中と波に乗る久田との一戦も実力伯仲で好勝負が期待される。

田口 15戦14勝(6KO)1敗
久田 22戦18勝(9KO)4敗
木村 10戦8勝(1KO)1敗1分
瀬川 23戦19勝(8KO)3敗1分


【スーパーフライ級】
準決勝(7月5日)
杉田純一郎(ヨネクラ)VS帝里木下(千里馬神戸)
シード 翁長吾央(大橋)

 3人の中では翁長がダントツのビッグネームだ。沖縄尚学高で高校3冠を達成し、東洋大でも活躍したサウスポーは、プロ入り当初から将来を嘱望された。ところが、期待の大きさを考えるといまひとつパッとしない試合が続き、迎えた昨年の王座決定戦では佐藤洋太(協栄)にまかさの完敗。31歳になった翁長にとって今大会は正念場となろう。
 05年に弟の祐次郎と「双子新人王」を達成して話題をさらった杉田。08年、中広大悟(広島三栄)に敗れた日本王座決定戦以来のタイトルマッチ出場を目指すが、ここ6戦で4敗しているのが気になるところ。無敗の帝里に対し意地を見せられるか。

杉田 21戦16勝(7KO)5敗
帝里 12戦12勝(3KO)
翁長 19戦17勝(12KO)1敗1分


【スーパーバンタム級
準決勝(7月5日)
石本康隆(帝拳)VS長井祐太(勝又)
シード 塩谷悠(川島)

 それぞれキャリア豊富な3人がエントリーした。01年に全日本新人王を獲得した長井は、長くタイトルマッチに恵まれなかった苦労人だ。昨年、ようやく芹江匡普(伴流)に初挑戦するも5回TKO負け。かつてのスピードに陰りが出てきたという印象は否めない。粘り強いが決定打のない石本との一戦は我慢比べか。塩谷は03年の全日本新人王。現WBA世界スーパーバンタム級王者の下田昭文(帝拳)に挑んだ07年以来、2度目のタイトル挑戦を目指す。

石本 22戦17勝(3KO)5敗
長井 34戦25勝(16KO)6敗3分
塩谷 26戦22勝(10KO)2敗2分


【スーパーフェザー級
準決勝(7月6日)
大村光矢(三迫)VS松崎博保(協栄)→大村棄権により、松崎が決勝へ
金子大樹(横浜光)VS吉田恭輔(帝拳)

 大村が棄権したため松崎の決勝進出が決定。保険会社に勤務するサラリーマンボクサーの松崎は、これまで2度のタイトル挑戦に失敗している。3度目の正直を実現させるためには、持ち前のディフェンスに加えて攻撃力のアップが必要だろう。
 10年に新人王を獲得したばかりの吉田は11年に入って福岡帝拳から帝拳に移籍した。手足が長くてスピードがあり、将来性は抜群。最初のチャンスのものにすることができるだろうか。

大村 19戦13勝(9KO)5敗1分
松崎 26戦20勝(10KO)5敗1分
金子 17戦13勝(6KO)2敗2分
吉田 9戦8勝(5KO)1分


【スーパーライト級】
準決勝(7月6日)
方波見吉隆(伴流)VS麻生興一(角海老宝石)
小池浩太(ワタナベ)VS岩淵真也(草加有沢)

 独特のノーガードスタイルを貫く長身サウスポーの方波見だが、その世界観はなかなか理解されず、判定に泣いた試合がいくつもあった。相手はブルファイタータイプの麻生。やりにくいと感じるのは麻生のように思うが…。
 小池と岩淵はともにタイトルマッチ初出場を目指す新鋭。岩淵は随所にセンスを見せながらなかなか才能を開花しきれないという印象。今大会を飛躍のきっかけにしたいところだ。

方波見 23戦17勝(11KO)5敗1分
麻生  15戦12勝(8KO)2敗2分
小池  18戦14勝(5KO)4敗
岩淵  18戦15勝(12KO)3敗
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 最強後楽園2011ガイド
 2011年5月
 2011年6月