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7月1日 東京・後楽園ホール 日本スーパーバンタム級王座統一戦
正規チャンピオン
(伴流) 
芹江 匡晋
せりえ・まさあき
VS 暫定チャンピオン
瀬藤 幹人(協栄)
せとう・みきひと
1983年3月4日/東京都港区 生年月日/出身地 1979年11月4日/千葉県市原市
170p 身長 168p
2003年8月15日 プロデビュー 2000年5月15日
21戦18勝(8KO)3敗 プロ戦績 41戦31勝(16KO)8敗2分
右ボクサーファイター タイプ 右ボクサーファイター

  左ひざじん帯を部分断裂した正規王者の芹江がけがから復帰。その間に暫定王者となった瀬藤とタイトルを統一する大一番だ。
 この2人は09年5月「日本タイトル挑戦者決定戦」で対戦している。結果は2−1という際どい判定で芹江に軍配が上がった。これでタイトル挑戦権を得た芹江は、次の試合で木村章司(花形)を下して日本タイトルを奪取。以後、3度の防衛を成功させている。
 芹江は相手にしてみるとやっかいなボクサーだろう。セオリーにはない独特のリズムを持っていて、おまけに運動能力も高い。日本王者となってからはオーソドックスなスタイルも取り入れ、ワンランクレベルアップした印象だ。
 一方の瀬藤は早くにランキング入りしながら、長くタイトルマッチに恵まれなかった苦労人である。キャリアは既に41戦。その割にボクシングは良くも悪くも若い。スピードとむき出しの闘争心が持ち味で、06年に現世界王者の下田昭文(帝拳)を下したようにはまれば強いのだが、コントロールを失って自滅するパターンもけっこうあった。
 日本王者になって成長したチャンピオンが有利とは思う。ただ両者の相性、芹江の半年以上に及ぶブランクも加味すると、予想は5分5分だろうか。
 セミは元日本ウエルター級王者の加藤壮次郎(協栄)が登場。十二村喜久(角海老宝石)とのランカー対決となっている。
(文/渋谷淳)
7月2日 東京・後楽園ホール 東洋太平洋ライト級タイトルマッチ
チャンピオン WBC6位 WBA7位
 (M.T) 
三垣 龍次
みがき・りゅうじ
挑戦者同級3位 日本1位
川瀬 昭二 (松田)
かわせ・しょうじ
 not ready
1981年9月12日/岡山県岡山市 生年月日/出身地 1982年3月9日/愛知県名古屋市
172p 身長 174p
70戦52勝18敗 アマ戦績 28戦22勝6敗
2004年6月28日 プロデビュー 2000年3月19日
18戦16勝(12KO)2敗 プロ戦績 35戦27勝(17KO)3敗5分
右ボクサーファイター タイプ 右ボクサーファイター

 元日本ライト級王者で現在東洋太平洋ライト級のベルトを守っている三垣龍次が、名古屋のベテラン、川瀬昭二を迎えてV3戦を行う。
 2010年1月に古豪・長嶋建吾(18古河)を10回TKOに下してOPBFタイトルを手に入れた後、金井アキノリ(姫路木下)との初防衛戦ではダウンを挽回して打撃戦を制し(6回TKO)、2度目の防衛戦では高KO率を誇る高瀬司(大阪帝拳)を圧倒(8回TKO)しており、このチャンピオンはどんどん評価をあげている。スタイルはコワモテの風貌に似合わず、国体優勝の元トップアマらしく左ジャブを軸とした組み立てで、主武器の硬質な右ストレートにつなげていく。その右でチャンスをつかんだ後の詰めも鋭い。高瀬戦後、右拳の手術でブランクをつくり、今回は7ヶ月ぶりのリングとなるが、6月初旬にアメリカに渡り、ロサンゼルス近郊のジムでトレーニングキャンプを張り、IBFライト級王者・ミゲール・バスケス(メキシコ)や元WBOスーパーバンタム級王者・ダニエル・ポンセ・デ・レオン(同)ら格上との連日のスパーリングで実戦の感覚を取り戻してきた。
 一方の名古屋からの刺客は、2008年7月、当時の日本ライト級王者・石井一太郎(横浜光)に1位の指名挑戦者として挑んで以来、2度目のタイトル挑戦で、それ以来の後楽園ホール登場だ。この戦いは両者バッティングによる負傷判定負けに終わったが、長い腕を生かした持ち前のアウトボクシングで石井の強打を封じ続けた。その後は地元で負け知らず。2010年4月に日本1位の座に復帰して以来、ずっとその地位を守っている。
 三垣は「打ち合いが好き」と自身が言うように被弾も少なくはないが、好戦派との打ち合いの中で存在感を増してきたチャンピオンだ。今回、挑戦者の川瀬が打撃戦を回避するのはほぼ間違いない。そんなチャレンジャーをきっちりとつかまえて、仕留めることができれば、三垣の評価はさらに上がる。その先には無敗の指名挑戦者、ジェイ・ソルミアノ(フィリピン)戦を見据え、現日本ライト級王者の荒川仁人(八王子中屋)からも対戦のラブコールを受けている東洋チャンピオン。ここで不覚をとるなんてことは、ないと思うが…。
(文/宮田有理子)
7月5日、6日の最強後楽園展望はこちら
7月9日 米国・アトランティックシティ ボードウォークホール 
                           WBA世界スーパーバンタム級タイトルマッチ
チャンピオン
(帝拳) 下田 昭文
しもだ・あきふみ
挑戦者1位
リコ・ラモス (米国)
Rico Ramos
not ready
1984年9月11日/北海道 生年月日/出身地 1987年6月20日/カリフォルニア・ピコリベラ
171cm 身長 165cm
2戦2勝2KO・RSC アマ戦績 114戦97勝17敗(諸説あり)
2003年1月18日 プロデビュー 2008年3月20日
26戦23勝(10KO)2敗1分 プロ戦績 19戦19勝(10KO)
左ボクサーファイター タイプ 右ボクサーファイター

 下田昭文が日本人世界王者として初めてアメリカ本土で防衛戦を行なう栄誉を担う。舞台はアメリカ・ニュージャージー州アトランティックシティのボードウォークホール。かつて、あの元世界統一ヘビー級王者、マイク・タイソン(アメリカ)をはじめ、多くのビッグネームたちが覇権を争った場所に日本人王者が足跡を刻む、というだけでもワクワクするが、加えて元WBO世界ウェルター級&暫定ジュニア・ミドル級王者、ポール・ウィリアムス(アメリカ)とキューバ出身の元トップアマ、エリスランディ・ララ(WBAスーパーウェルター級5位)のビッグカードの前にセットされたこのタイトルマッチは、大手ケーブル放送局HBOにより全米に放映される。そのパフォーマンスによっては“下田昭文”という個人のアピールはもちろんのこと、日本人ボクサーの価値をも高める可能性を秘めた、まさにビッグチャンスだ。
 海の向こうで下田を待ち受ける挑戦者にも不足はない。ランキング1位で19戦全勝(10KO)のリコ・ラモス、23歳である。プロ叩き上げの下田に対し、100戦以上のアマ戦績を誇るラモスは、直近の2011年2月、WBC世界バンタム級王者時代の長谷川穂積(真正)の7度目の防衛戦(長谷川の2回TKO勝利)の挑戦者で、下田と同じサウスポーのアレハンドロ・バルデス(メキシコ)と対戦。危なげなく10回判定で勝利している。だが、その堅実なプロ戦歴を見れば、まだ試されざるホープと言えるではないだろうか。Youtubeでラモスの試合映像を見る限りでは、下田のほうが持ち味のひとつであるスピードで一枚上とも感じられた。
 だが、下田が世界初挑戦で戴冠した今年1月31日の李冽理(横浜光)戦で一回りグレードアップしたように、ついにチャンスをつかんだ若いラモスが、この機を捉えて一気に開花する可能性は十分にあり、そのためのバックグラウンドとしては十二分とは言えるだろう。一方で、これが初防衛戦となる下田もまた、進境著しい伸び盛りの王者である。この刺激に満ちた未知なる挑戦をバネに、もう一段、飛躍する可能性だって大いにあるのだ。予想の難しい一戦であり、だからこそ、楽しみな一戦であるのは間違いない。
 いずれにしても、かの地で下田が下田らしく、いい意味で奔放に闘うことができるかどうかが、言うまでもなく何よりのポイントになる。その点では、下田自身が一昨年、アメリカ西海岸でのトレーニングとメキシコでの試合を経験していることは貴重であるし、サポートする帝拳ジムスタッフ陣の豊富な海外経験も心強い。本場の空気を一身に浴びて、下田がどんなボクシングを披露してくれるのか。臆することなく持てる力を存分に発揮し、運命を切り拓いてもらいたい。
試合の模様は、7月10日(日)午前10時55分からWOWOW(デジタル193ch)が生中継
(文/船橋真二郎)
7月11日 東京・後楽園ホール 日本フェザー級タイトルマッチ

チャンピオン WBA9位・WBC15位
 (大橋) 細野 悟
ほその さとし 


日本フェザー級6位
高山 和徳 (船橋ドラゴン)
たかやま かずのり 
1983年11月6日/福島県 生年月日/出身地 1982年7月19日/千葉県
172p 身長 169cm
63戦40勝(20KO・RSC)23敗 アマ戦績 なし
2005年8月22日 プロデビュー 2001年11月29日
21戦20勝(14KO)1敗 プロ戦績 30戦19勝(4KO)7敗4分
右ファイター タイプ 右ボクサーファイター
世界戦の交渉がまとまらなかった細野悟が、3度目の防衛戦を迎える。そうした経緯が、細野のメンタル面に影響しないかは懸念されるところ。細野は元・東洋太平洋同級王者(3度防衛)であり、昨年1月には1階級下げて当時のWBA世界スーパーバンタム級王者・プーンサワット・クラティンデーンジム(タイ)に挑戦もしている(判定負け)。実績を考えても、上で戦いたいという欲求はうなづけるし、アマチュア時代(法政大学)の2004年、全日本選手権決勝で勝って優勝を決めたときの相手である李冽理(横浜光=当時・朝鮮大学)が昨年10月、プーンサワットから世界王座を奪ったことについて「複雑」と胸の内を正直に明かしたのは、前回2度目の防衛戦の後だった。だが、その同じ控え室で神妙に語っていた気持ちが細野の心に刻まれているなら、恐らく心配は無用だろう。
 細野は被災地である福島県いわき市の出身。2度目の防衛戦が行なわれた4月2日は、震災で興行を自粛した後楽園ホールの再開2日目だった。両親をはじめとした家族が細野の住む横浜に避難するなど、震災の爪痕を身近なところでも感じていた。試合当日には、仕事のために横浜からいわき市に戻っていた父親を含めた約20名が地元からバスで応援に駆けつけた。3ラウンドTKOで防衛に成功し、「自分が試合に勝つことで、活力を与えたいと思ったし、『オレも頑張ろう』って思ってもらえたらありがたいです」と語った細野はさらにこう続けていた。「(プロとして)常にそういう気持ちではあったんですけど、まだまだ(気持ちが)足りなかったと気づかされました」。
 世界挑戦に失敗後、日本タイトルを再挑戦への足掛かりとした細野だが、ここ最近の試合内容を見れば、“バズーカ”と呼ばれる強打者の本領を発揮しているとは言いがたい。挑戦者の高山和徳は、昨年2月に日本フェザー級王座決定戦で李冽理に敗れて以来、2度目のタイトル挑戦となる。トリッキーなタイミングと技巧を併せ持つ日本ランキングの常連。ただ、巧さはあっても、怖さという点で物足りないのは否めない。再起戦でノーランカーに敗れるなど、直近の3試合では不安定な戦いぶりも目立つ。もちろん、2度目のチャンスを活かすべく、高山サイドは十分に戦略を練り上げ、モチベーション高く挑んでくるはずだが、細野にとっては世界再挑戦をアピールするためにも、勝ち方が問われる一戦という位置づけ。ポイントは、細野が初防衛戦の序盤で手こずった木原和正(ウォズ)と同様、基本的に足を使って間合いを取るタイプの高山に対して、いかに位置取りよくプレッシャーをかけながら戦えるか。得意の左ボディブローを有効に使うことができるかも、カギになりそう。因縁のある李に、高山がいいところなく判定で敗れ去っていることは、いい意味で細野を煽るだろうし、自身が再確認したように、観客の心を動かす快心のパフォーマンスを期待したい。
セミファイナルには元・アマチュア高校4冠で、昨年の全日本ミニマム級新人王を獲得した日本同級7位の原隆二(大橋)が登場する。新人王獲得後は相手に恵まれず、2試合続けて無名のタイ選手との対戦だった原が今回迎えるのは石井博(レイスポーツ)。ノーランカーではあるが、今年4月には、2009年の全日本ミニマム級新人王で現・日本ミニマム級2位の三田村拓也(ワールドスポーツ)に善戦している(結果は0-2の判定負け)。三田村を大いに苦しめた、ぐいぐいとプレッシャーをかけながら間断なく手数を繰り出してくる石井のスタイルは、原にとっても決してやりやすくはないはず。その石井を相手に原がポテンシャルを示すことができるのか。この一戦にも注目だ。
                        
  (文/船橋真二郎)
7月12日 東京・後楽園ホール 日本スーパーライト級王座決定戦

日本スーパーライト級1位
 (フラッシュ赤羽) 長瀬 慎弥
ながせ しんや

日本スーパーライト級2位
伊藤 和也 (宮田) 
いとう かずや
1981年11月18日/埼玉県 生年月日/出身地 1984年4月4日/山形県
170cm 身長 178cm
2001年10月3日 プロデビュー 2005年8月31日
23戦18勝(9KO)3敗2分 プロ戦績 14戦11勝(6KO)3敗
右ボクサーファイター タイプ 右ファイター
長瀬慎弥にとっては様々な意味で、待ちに待ったタイトルマッチになる。当初は2月5日に指名挑戦者として亀海喜寛(帝拳)に挑戦する予定だったが、亀海が急病で出場不可能になり、王座を返上してキャンセル。続いて3月17日にセットされた伊藤和也との王座決定戦が、直前の東日本震災で中止となり、さらに4か月後のこの日に延期されることになった。そして、長瀬にとっては、これが2006年3月以来、実に5年4か月ぶりの日本タイトル挑戦。初挑戦では、のちに日本スーパーライト級の最多防衛記録である13度防衛を果たす実力派王者・木村登勇(横浜光=引退)の6度目の防衛戦の相手として果敢に挑み、7回TKOで散った。その時点では、能力を高く評価されていた長瀬の2度目は、そう遠くない将来に訪れるのだろうと思われていたが、勝負どころでの黒星やケガなどもあり、回り道することになった。今秋で、プロキャリア丸10年、三十路を迎えるベテランはラストチャンスの覚悟で、このリングに臨むはずである。
 対する伊藤は長瀬とは対照的。亀海の思わぬ返上でタイトル初挑戦のチャンスが転がり込んできた格好だ。さらに、もしこの決定戦が予定通りに挙行されていれば、準備期間は約1か月と短かったことになるが、結果として十分な時間を得ることもできた。運は伊藤に味方しているようにも思えるが、両者のボクシングの質やセンスを比べれば、正直、長瀬に軍配が上がる。それでも、愚直に前進して攻める伊藤の武骨なスタイルは、誰にとっても決してやりやすいものではなく、やることはひとつと伊藤には迷いもないはず。そして、伊藤が日本ランク入りを決めたのは敵地である。2009年4月、前出の木村に前年の12月に挑んで敗れた技巧派サウスポー・西尾彰人(姫路木下=引退)の再起戦の相手を務め、兵庫県・高砂市総合体育館で番狂わせの4回TKO勝ちを収めたもの。勝負どころでの度胸のよさは証明済みと言えるのかもしれない。
 勝負の分岐点は序盤。試合の流れを先につかんだほうが、よりベルトに近づくだろう。
(文/船橋真二郎)
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